元気に見えても、加齢と共に体の機能が低下していくのは人間も猫も同じ。体の老いを理解し、病気を未然に防ぐには「健康診断」が大切だ。そこで今回は、猫の健康診断について、その目的や内容、費用などを紹介する。
ペットの予防医療の啓発・普及活動を推進する獣医師団体「Team HOPE」が、犬や猫といったペットを病気で亡くした経験を持つ男女500名を対象に行った「ペットの健康管理に関する実態調査」( 2017年8月発表)によると、生前、健康診断を受けさせていた飼い主は、19.2%と2割未満にとどまった。
「ペットの健康診断は飼い主の任意に委ねられていますが、病気の早期発見、早期治療のためにも、0才の時から年1回、7才以上では年2回の健診が理想です」
と、Team HOPE賛同病院の犬山動物総合医療センター獣医師・井立由起子さんは言う。というのも、健康診断には、現在の健康状態を把握するためだけでなく、体の状態や既往症などのデータを若い頃から蓄積する意味もあるからだ。
「猫はがまん強く、症状が表れた時にはすでに重症なこともあります。しかし、若い頃からデータをとっておけば、小さな変化にも早く気づけ、症状が初期の段階から治療を進められます」(井立さん・以下同)
犬は狂犬病の予防注射時に、年1回は動物病院を訪れ健康状態をチェックするが、猫の場合は子猫時代のワクチン接種や避妊・去勢手術が終わると、動物病院から遠のいてしまう傾向がある。
愛猫の健康診断を希望する場合、まずは電話などでかかりつけ病院に予約をしておくとスムーズだ。検査内容は、猫の年齢や健康状態、病院のシステムなどによって異なるが、Team HOPEの賛同病院では、全身状態を把握するため、主に次の項目を推奨している。
【1】問診
食事や水の量、尿や便の回数や状態、家での様子などを飼い主から聞く。
【2】視診
目や耳、口、毛艶、皮膚の状態のほか、歩き方に異常がないかなどをチェックする。
【3】触診
猫を直接触り、体形のチェックやリンパの腫れ、しこりの有無などを確認する。
【4】聴診
聴診器で心音、呼吸音、肺音、腸音などに異常がないかをチェックする。
【5】血液検査
貧血や感染症、炎症の有無、肝臓・腎臓などの状態や機能に異常がないかなどを調べる。