国内

「消費税20%の未来」 財務省の作戦をどう捉えるべきか

増税は不可避なのか(麻生太郎財務相兼金融相=時事通信フォト)

 われわれの生活に直結する消費税。8%から10%への増税は無風といえたが、これが将来、倍に跳ね上がるとしたらどうか。コラムニストのオバタカズユキ氏が考察する。

 * * * 
 10月1日の消費税増税からもうすぐ2か月が経つというタイミングで、ちょっと気になるニュースが流れてきた。IMF(国際通貨基金)のトップに就任したゲオルギエワ専務理事が来日し、「日本は消費税により頼れる余地があると考えている」と述べたそうなのである。

 会見に合わせて公表されたIMFの声明では、現在10%の消費税率を2030年までに15%、2050年までに20%へ引き上げる必要がある、とのこと。その主な理由として、高齢化によって増え続ける社会保障費の負担を挙げていたという。このニュースに対し、ネットからは反発の声が続々。たとえば、以下のようなツイートが飛んできた。

〈あんまり強い言葉は使いたくないんだが「バカは黙ってろ」 お前らのくそみたいな提言で日本が没落して人が死ぬんだよ。日本国民が死ぬんだよ!日本に近寄るなバカが!〉
〈こんなとんでもない内政干渉を言われて、はいはいと聞くつもりか。冗談じゃない。消費税は5%に下げること、税金は富裕層・大企業からちゃんととることこそ、今必要です〉
〈IMFの言う通り消費を20%にすればギリシャやアルゼンチンの二の舞になる。世界最速レベルで少子超高齢化で人口激減に進み、国内マーケットが急激に縮小する国で消費抑制が加速する。消費税の増税はあり得ない。ただの自殺行為でしかない〉

 いきなり外からやってきて勝手なことを言ってくれるな!との怒りの声が渦巻いているわけだ。そうした声を見越して、テレ朝newsでは、「IMFがなぜ日本へここまで具体的に提言するか」、第一生命経済研究所・永濱利廣首席エコノミストからコメントを取って以下を記事にしている。

「IMFというのは、日本の財務省からも職員が出向しています。政策提言的な部分は各国の財務省の意向が色濃く反映されているのが特徴。ある意味、直接、自国の国民に言いにくい耳の痛い話をIMFという外的機関を使って発言することはよくあることです」

 なるほど、2030年までに15%、2050年までに20%へ引き上げというのは、つまり財務省の意向だと思っていいわけだ。

 自民党の安藤裕衆議院議員も、ANN NEWSが流した「IMFは消費税率を2030年までに15%、さらに2050年までには20%まで段階的に引き上げる必要があると提言したのです。これに対し、ネット上では反発の声が上がっています」という内容に対して、〈当たり前です。ネットの住民は、このIMFの提言は財務省が言わせていることを知っていますから〉とツイートし、大量に拡散されていた。与党の政治家の発言だけに説得力がある。財務省はとにかく増税で財政再建をしたいのだ。

 それにしてもなぜ、今のタイミングで、IMF≒財務省は、こんな情報を流したのだろうか。考えられるのは、こうしてチビチビとさらなる増税の可能性を示唆し続けることによって、国民の意識が慣れていく効果を狙っているかもしれないということだ。「ああ、また増税増税言ってるね。もう聞き飽きたし、別にいいよ」というように、反発心を萎えさせていく作戦のようなもの。

 あるいは、10月1日の増税が意外なほどスムースに進んだので、だったら本音をもうちょっと聞いてもらいますぜ、という話なのかもしれない。今なら、強い抵抗を受けずに、自分たちの意向を伝えていけるんじゃないか、と。

関連記事

トピックス

民放ドラマ初主演の俳優・磯村勇斗
《ムッチ先輩から1年》磯村勇斗が32歳の今「民放ドラマ初主演」の理由 “特撮ヒーロー出身のイケメン俳優”から脱却も
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン