高血圧を放置すると、動脈硬化が進んで、脳卒中や心筋梗塞などの合併症を引き起こす。それゆえ日常生活から減塩が必要とされ、世界保健機関(WHO)は1日の塩分摂取の上限を5gとし、厚生労働省は男性は8g未満、女性は7g未満を推奨する。
だが世界では、推奨値以上の塩分を摂取しても健康リスクは上昇せず、逆に過度な制限は病気リスクが上がるという研究結果がある。
2018年にカナダのマクマスター大の研究チームが英医学雑誌『ランセット』に発表した論文では、8万人超の尿中ナトリウム排泄量と健康との関連を調べた。
その結果、最も死亡率が低かったのは、1日に約12gの塩分を摂取するグループだった。また塩分摂取量が1日に7.5g以下の人は、1日に12.5gまで摂取する人と比較すると心疾患や死亡リスクが高くなることも分かった。
米ラッシュ大学メディカルセンターの研究チームが2015年に発表した論文では、833人の心臓病患者を平均3年間追跡調査した。
その結果、減塩食療法を受けている心臓病患者は、受けていない患者に比べて、死亡リスクが69%、入院するリスクが68%高くなった。気になる原因について同研究チームは、「減塩によって体内の水分が不足する。そのとき水分量を維持するために分泌されるホルモンが、心臓病を引き起こす原因になっているのではないか」と推測する。北品川藤クリニック院長の石原藤樹医師が指摘する。
「その他にも、世界中の多くの研究が『WHOや厚労省の塩分摂取目標は厳しすぎる』ことを示唆しています。塩分は生命活動に必要不可欠であり、健康のため摂取すべき適量が明確になっていない段階で、“塩分は悪者”と決めつけ、減塩を迫るのは早計です」