香取が2019年を表す漢字に選んだのは、最高の「最」。踊るような文字を描いてくれました(撮影/田中智久)
山田:それを言うなら、慎吾ちゃんも八面六臂の活躍ですよね。
香取:2019年は(映画)『凪待ち』の公開もあったし、ファンミのステージに立てたり、個展ができたり、音楽もやれたり、本当に充実していました。『凪待ち』のキャンペーンでは、撮影でお世話になった被災地の皆さんにまたお会いできて、改めていろいろなことを考える機会もいただけました。
歌手一本とか、俳優一本とか、もちろん、アート一本とかいうのではなく、デビュー当時からぼくは全部やっていたいと思っていて、それが変わらずに今もそのままやれているというのが最高だなって。だから2019年を漢字一文字で表すとしたら最高の「最」ですね。
山田:その分、本当にお忙しそう。
香取:これも昔と変わらないことなんですけど、いつもギリギリなんですよね(苦笑)。アルバムのことは、けっこう前から話してる割には、タイトルから選曲まで、もろもろ、ギリギリだったなぁ。それに、アルバムを作るはずだったのに、先にシングルが配信されて(笑い)。ヤバイ、アルバムのジャケ(ット)写(真)、もう決めなくちゃ…と、アートディレクターさんやスタッフみんなと集合して、最初に決まったのは、ピンクと黄色。スマホの画面上で見た時に、その中でいちばん目立つ色って何だろうっていうところから始まりました。
ミックス(=複数の録音トラックを1つに混ぜる)したの、いつだったっけ?(と、レコーディングスタッフに確認)9月18日? ホント、ギリギリですよね。これは、この30年近く、変わっていません。たぶん、自分たちは、ずっとこのやり方で変わらないんだと思います。
山田:変わらないといえば、今日の撮影のスタイリストさんやメイクさんをはじめ、以前から仕事を一緒にされていたクリエイターの皆さんと、再びタッグを組めていますよね。拝見していて、それはとてもうれしいことだし、なんだかホッとしてしまいます。
香取:確かに、それは本当にうれしいことです。
山田:3人が、また歌ってくれていることもファンの皆さんは本当に喜んでいらっしゃる。私は映画『クソ野郎と美しき世界』の『慎吾ちゃんと歌喰いの巻』を観た時、いろいろな想いが重なってしまって、すごく悲しくなったんです。
香取:不思議な作品でしたよね。あの頃の自分の感覚や想いと内容が近いといえば近いんですけど、あれは、あくまでも「物語」なので。でも、クリエイター陣がぼくにあの作品を当てたっていうのは面白かったですね。
ぼくにとって音楽というのは、すごく背中を押してくれる存在だし、昔から音楽を伝えるのも大好きだったんですけど、忙しかったり、考えることが多くなりすぎて、そういう気持ちになれなくなった時もありました。気分が落ちたりした時ほど音楽に助けられるのに、その段階よりもう一歩、気持ちが深いところにいっちゃうと、音楽を聴くのも忘れてしまう。そんな時期が間違いなくあったんです。でも、番組のゲストに星野源さん(38)がいらしてくれて、『SUN』を聴かせてもらった時、久しぶりに「あぁ、音楽って楽しいなぁ」と思えたんです。今から思えば、そうした頃のことを経て、このアルバムがあるんだなって。