ライフ

角打ち発祥の地といわれる北九州 暖簾の奥に今宵も溢れる笑顔

「笑いながら楽しく飲もう」の店のルール通り、ご機嫌な常連客のダジャレに初めての客も笑う

 全国の角打ちを訪ねる本連載は、このたび100回を迎えた。そこで記念の場所として訪れたのは、発祥の地といわれる角打ちの聖地、北九州にあって名店と誉れ高い『赤壁酒店』だ。

「店の名に“かべ”はあるけど、客も店主も“かべ”がない。居心地いいけん、誰でも気楽に飲めるっちゃ」(40代消防士)

「今日初めてなのに、昔から知っている店みたいです」(40代料理人)

 夕暮れ時のアーケードを歩くと、下関産の活かにや新鮮なふぐ、どっしりと大きなかぶや、ごつごつした里芋など元気な九州野菜が並び、揚げたてのてんぷら(さつま揚げ)がふわっと香る。そんな、昭和の風情が色濃く残る北九州の台所、小倉の旦過(たんが)市場。深緑に“あかかべ”の太文字が映える暖簾がある。

 その奥では、業種も年齢もばらばらの客たちが楽しそうにくつろぎ、笑顔が溢れていた。

「ここは神嶽(かんたけ)川で運んだ食材を売る闇市でした。観光客も増えましたが、地元の人が普通に夕飯の買い物していますよ。戦前からここで角打ちをやっています。北九州で角打ちといえば、製鉄所や陶器の会社とか、大企業のおひざ元にあって、工場や夜勤明けの人が飲みに来るパターンが多いようですが、うちは市場の威勢のいい魚屋の大将に、ビジネスマン、消防士、観光客、女性…あらゆるお客さんに愛されてやってきましたね」と静かに語るのは、5代目の森野敏明さん(41歳)。

 20歳のときから店に立ち、店主の母親とふたりでこの店を切り盛りしている。

 店の左半分は酒店、右半分が角打ちスペース。暖簾をくぐるとすぐ右手に大きな冷蔵庫があって、好きな酒を取り出して飲むスタイル。店の正面奥にカウンターがあり、壁一面にずらりと地酒が並ぶ。ちょうど目線の位置に、立ち飲みのルールが掲げられている。

「笑いながら共に楽しく飲もう」
「人に酒の無理強いはしない」
「自分のペースでゆっくりと」

 代々伝わる訓示のおかげか、お客さんは決して騒いだりはしないのだという。 

関連記事

トピックス

詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
モンゴルを訪問される予定の雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、「灼熱のモンゴル8日間」断行のご覚悟 主治医とともに18年ぶりの雪辱、現地では角界のヒーローたちがお出迎えか 
女性セブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン