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坪内祐三氏が「出会えただけで2019年は良かった」と語る本

『内閣調査室秘録 戦後思想を動かした男』

 年末年始はゆっくり腰を据えて本を読む絶好の機会。2020年は果たしてどんな年になるのか? 評論家の坪内祐三氏が選んだ2020年を読み解く1冊は、『内閣調査室秘録 戦後思想を動かした男』だ。

●『内閣調査室秘録 戦後思想を動かした男』/志垣民郎・著 岸俊光・編/文春新書/1200円+税

「二〇二〇年はこうなる」と言うよりも、年々私の絶望感は深くなっています。つまり歴史に対するデタラメがどんどん増えているので。その原因は皮肉なことに「文明の発達」です。つまりコンピューターが進むことによって、逆に、正しい歴史から離れてしまうのです。最近の校閲の人の仕事を見るにつけ私はそう思います。

 かつて私の編集者時代の校閲の人の仕事振りは素晴らしかった。一つの事実を見極めるために幾つもの資料に当った。いわゆるカウンター・レファレンスです。ところが最近の校閲の人はパソコン一つで仕事をするのです。

 例えば最近私はこういう経験をしました。ある原稿で、「十数年前、相撲人気がなかった頃……」と書いたら、校閲の人が、その箇所に印をつけ、「八百長問題は二〇一一年だから八年前?」と書き入れてきました。

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