「あら、Kちゃん! この子はFちゃん!」と、母は写真を見るなり友達の名前を呼んだ。もう5年も一緒に過ごしているサ高住の友達の名は1人も覚えられないのに…。
「高校の遠足だったかしら。担任が美術の先生でね、ちょっとナヨナヨした人だったの。お弁当の箸を忘れたと言って、“Mちゃん(母)のお箸、使わせて~”って。キャー! 気持ちワル~い(笑い)」
母は顔をクシャクシャにして身悶えた。その表現がまたリアルで、私の頭の中にもキモカワ系の美術教師が浮かび、一緒に身悶えた。JKの頃の母も、きっとこんなふうに友達と笑い転げていたのだろう。
このほか、伯母と姉妹で旅行した時や、結婚したばかりの頃の写真を見ながら、母は上機嫌で話し続けた。1分前のことも忘れるいつもの母は、そこにはいなかった。
思い出の写真を捨てなくてよかったと、どとうのような片付けの日々を思い出した。
※女性セブン2020年1月2・9日号