では、どういう局面で、どういう戦略をとるべきなのか。
このゲームについて、アメリカのゲティスバーグ大学のネラー氏とプレッサー氏が行った研究によると、自分の点数、相手の点数、自分の現在の手番でこれまでに出た目の合計の3つを変数として、確率変数を決める。その確率変数を用いて、サイコロを振り続けるか、振り止めるかに応じた確率変数間の関係式(漸化式)をつくる。そして、それを解くということになる。
しかし、この関係式の数は、50万5000個にも及ぶ。人間が紙と鉛筆を使って解くのは、ほぼ不可能だ。そこで、コンピューターを使った計算で、漸近的に解を求めることとなる。この計算の結果は、とても複雑で、簡単に文章で言い表すことは難しいが、あえて大まかにいうと次のようになる。
(1)各プレイヤーの点数が20、30点などと低い、ゲームの序盤の段階では、「20点確保戦略」をとる。
(2)ゲームが中盤に入り点数が高くなってきたら、「1回の手番で10点分の目が出た段階で振り止める」など、振り止めの判断基準点数を少なくして、手番での得点が0にならないよう慎重な手を打つ。
(3)ゴールが迫ってきたら、「100点に達するまで振り続ける」ような大胆な勝負に打って出る。
(2)の慎重さと、(3)の大胆さという相反する戦略を、どう使い分けるか。そこが、各プレイヤーの腕の見せ所となる。戦略の使い分けには、各プレイヤーの性格が出る。相手の戦略を読んで、自分の戦略を決めることも必要となるだろう。これこそが、このゲームの醍醐味だ。
「慎重かつ大胆に」は、テレビの某クイズ番組の司会者の頻出フレーズだったが、このゲームの戦略にも当てはまるのだ。
「20点確保戦略」に固執しているばかりでは、うまくいくとは限らない。これは経営学などで、「かならずしも、部分最適が全体最適につながるわけではない」ということの事例ともいえるだろう。
局面ごとに、とるべき戦略を柔軟に変える。これこそが勝つために必要な戦略と思われるのだが、いかがだろうか。