たとえば、前回の手番までに30点の点数を獲得していたとしよう。今回の手番で、「6」、「4」、「5」、「3」と1以外の目が4回続けて出たとする。ここで振り止めれば、今回の手番の得点は18点となり、前回までの点数と合わせて、合計点数は48点となる。
しかし、ここで強欲さを発揮して、サイコロを振り続けて、つぎに「1」が出てしまったとしよう。すると、すでに出ていた18点はすべて没収されて、今回の手番の得点は0点となり、合計点数は30点のままとなる。そして、手番は相手に移ってしまう。
これをボードゲームに例えれば、100マス先にゴールがあって、途中のマスに「1回休み」や「振り出しに戻る」といったイベントが一切ない双六といえる。ただし、サイコロの振り方は普通の双六と違っていて、自分の手番で「1」が出ない限り何回も振って出た目の数だけコマを進めてよいが、「1」が出てしまったら手番を始めるときに居たマスに戻されてしまう、というルールだ。
このように、「ピッグ」は、サイコロ1つだけでできてルールも簡単だが、じつは奥が深い。各プレイヤーは、「自分の手番で、つねにサイコロを振り続けるか、振り止めるか」の判断が求められるからだ。
ではこのゲームで勝つためには、どういう戦略が求められるのだろうか。まず、単純に、1回の手番で獲得できる得点が確率的に最も多くなるような戦略を考えてみよう。「1回の手番での得点を最大化できれば、合計点数が早く100点に達するだろう」と考えるわけだ。
自分の手番で「1」が出てしまうと、その手番の得点は0になる。つまり、サイコロを1回振ると、6分の1の確率で、その手番の得点をすべて失う可能性がある。そこで、手番の得点がある程度たまったら、サイコロを振るのを止めて、その得点を確保したほうがよいはずだ。
サイコロを振り続けるか、振り止めるか。その判断の分かれ目は、「1」の目が出て得点をすべて失った場合に没収される得点の平均が、「1」以外の目が出て獲得できる得点の平均よりも大きいかどうかだ。「1」以外の目は、「2」~「6」だから、1回サイコロを振って獲得できる得点は平均して4点だ。