ゴーン被告のレバノン逃亡で遠のく日産事件の真相究明
◆ホンダは対等な立場での統合
100年に1度といわれる大変革を迎える自動車業界にとって、次世代の自動車運転車やコネクテッド―カー(インターネットへの常時接続機能を装備した自動車)の開発には莫大な資金が必要になる。一社で賄えるものではないため、ホンダがどこと組むかが焦点になっている。
メインバンクの三菱東京UFJ銀行(現・三菱UFJ銀行)は、かつて同じメインの三菱自動車とホンダの経営統合を画策したことがあった。しかし、経営危機に陥った三菱自を買収したのは、カルロス・ゴーン被告率いる日産だった。ずいぶん安い値段で買い叩いた。
今回、ホンダ系の部品メーカー3社の日立入りを、メインバンクの三菱UFJは後押しした。三菱UFJはホンダ系の部品メーカーに貸し込んでおり、日立の傘の下に入れば、安心できるからだ。日産に近い日立とホンダの部品統合の狙いは、もちろん、自動車再編への布石であり、ホンダと日産の経営統合は絵空事ではなくなった。
こうした最中、日産のナンバー3の関潤氏がケツをまくり、内田・新社長に三下り半を突きつけた。さらに、カルロス・ゴーン被告は海外逃亡犯になった。
日産の若手幹部は、「関さんが辞めることを最終決断したのは(2019年)12月2日の記者会見の後。内田・新社長がルノーとの経営統合に関する質問に、はっきり『統合は考えていない(統合ノー)』と明言しなかったからだ」という。「最年長の関さんはNO3という処遇にも不満だった」(同)とも。
「関氏が日本電産の社長に内定」とスクープ(2019年12月24日配信)したロイターは、関氏が「日産のために働いてきたが、サラリーマン人生の最後をCEOとしてチャレンジしたい」と語った、と当事者の肉声を伝えた。
日産がルノーとの関係を清算するのは容易なことではない。ホンダも日産・ルノー連合に吸収されることは望んでいないはずだ。「経営統合するなら対等な立場で」ということである。ホンダの関係者も「経営の独立性を担保できない相手と組むことはあり得ない」と話す。
ただ、このまま日産の経営の混乱が長引けば、日産・ルノー・三菱自動車連合にさらなる遠心力が働く可能性もある。もし三菱自動車がスピンアウトするようなことが起これば、ホンダ・三菱自動車の焼けぼっくいに火がつくことだってゼロではない。三菱商事など三菱グループ各社はそれを望んでいるとされる。
ゴーン事件がますます尾を引く中、日産は生き残りのため新たな業界再編へと舵を切るのか、注目である。