◆ホンダが日産に近い日立グループと部品統合
2019年10月30日、ホンダと日立製作所が傘下の部品メーカー4社を経営統合することで合意した。新会社「日立オートモティブシステムズ」には、日立が66.6%、ホンダが33.4%を出資する。日産をはじめとする部品の納入先に配慮して社名からホンダを外した。
同社はホンダ系のケーヒン、ショーワ、日信工業の3社と、日立の完全子会社の日立オートモティブシステムズが大同団結する。4社の合併が実現すれば、トヨタ系のデンソー、アイシン精機に次ぐ、売上高で国内第3位の自動車部品メーカーが誕生する。
3位といっても、デンソー、アイシン精機の背中は遠く、“弱者連合”という厳しい見方もあるが、もともと日立と日産は日産コンツェルンを源流とする同根企業。現在の日立オートモティブは日産向けが事業の3割で2番手のSUBARUの同10%を大きく引き離している。そこに、ホンダ系のエンジン関連に強いケーヒン、ステアリング(操舵装置)やショック・アブソーバー(衝撃を緩和する装置)のショーワ、2輪ブレーキで世界最大手の日信工業の3社が加わるわけだ。
ホンダの世界販売台数は526万台(2019年3月期)。日産は約552万台(同)。仮に両社合わせれば1078万台で“1000万台クラブ”への参加の資格を得る。トヨタ自動車や独フォルクスワーゲンと十分に戦えるうえに、約2000万台を売っているホンダの二輪車が加われば、世界の自動車市場で大きなインパクトとなる。
◆FCAとPSAが経営統合
海外に目を転じれば、2019年12月18日、欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と「プジョー」などを傘下に抱える仏グループPSA(旧プジョーシトロエン・グループ)が経営統合することで正式に合意した。2021年に出資比率50対50の新会社を設立する。新会社のCEOにはPSAのカルロス・タバレスCEOが就任する。
ちなみに両社の合計世界販売台数は871万台(2018年の年間実績)。独フォルクスワーゲン(同1083万台)、仏ルノー・日産・三菱自動車の3社連合(同1075万台)、トヨタ自動車(同1059万台)に次ぐ世界4位の自動車連合が誕生する。電動化や自動運転といった次世代車の開発に向け、生き残るための大型再編が始まったと見るべきだ。
FCAは2019年5月に仏ルノーに経営統合を提案したが、6月に撤回した。ルノーの筆頭株主である仏政府は、雇用を守るために仏国内の工場閉鎖に絶対反対だった。仏政府の同意を得られず、日産がFCAとの経営統合に後ろ向きだったことから、破談した。
ルノーとPSAには複雑な人間模様があるのをご存知だろうか。PSAのカルロス・タバレスCEOは強烈な業界再編論者でもあり、ルノーでナンバー2だった。ナンバー1のカルロス・ゴーン被告に、「そろそろトップの座を譲り渡してほしい」と直談判して、逆にカルロス・ゴーン被告に切られた。タバレスCEOの胸に一物、心に二物あってもおかしくはない。