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正月の福袋商戦に異変 「鬱袋」批判に怯える経営者たち

2008年、渋谷109前の路上で福袋の商品の交換を求める女性たち(時事通信フォト)

2008年、渋谷109前の路上で福袋の商品の交換を求める女性たち(時事通信フォト)

 もっとも、そのなかでも人気や不人気は存在するので、初売り当日の109周辺の路上では「あのショップの福袋が当たり」「あそこのブランドの福袋は買わない方が良い」と客同士による情報交換もされていた。まさにそれが、今ではネット上で行われるのである。

「正直に言えば、昔の福袋は”売れ残り品”が多かったのも事実です。中には、福袋用に安価なアイテムを作りブランドに卸す業者さえいました。でも今はネットですぐバレてしまいます。ネット上には毎年、福袋を買ってすぐに中身を晒す、というような動きがあり、中身がよければお得な福袋として、中身がひどければ“鬱袋”として、そのブランドやショップが笑い者になるのです。ひどい品が入っている、と名指しで糾弾された年、翌日以降のネットショップでの福袋の売り上げが30%落ちたこともあります」(須藤さん)

 ネットウォッチャーの山本マユさん(二十代)は当初、お得な福袋選びの情報収拾のために、ネット上の「福袋、鬱袋」に関する掲示板やブログ記事を読み漁っていた。だが、いつの間にか手段と目的が変わってしまったと笑う。

「毎年中身がひどい雑貨店の福袋などは、買って中身をアップするだけで拡散されるので、ブロガーやユーチューバーにも人気です。商品の安っぽさをディスって笑ったり、福袋に入っていたひどいアイテムを使ったコーディネートを晒してみたり、用途はいろいろです。私も毎年、2~3千円の福袋を買いますが、もはや中にどんなお得なものが入っているか、と言うよりは、ひどいものを期待している気がします」(山本さん)

 売れ残りを集めて「福袋」と称して販売するのは、客から見れば「誠実な売り手」とは言えないかもしれない。ただ、以前に比べれば、前述のことなどから売り手の誠実さは可視化されただろうし、販売店側も相当な苦労をしている。にも関わらず、もはや福袋は「ネタ」であり、福袋を買うのは「情弱(情報弱者)だ」という空気が蔓延っていることに、須藤さんは頭を悩ませる。

「昨年だったか、店頭では9千円で販売していたワンピースを5千円の福袋に入れて売りました。こちらとしては”当たり商品”のつもりだったのが、体の大きなお客様が着用した写真をネットにアップされたようで”ゴミのような商品だ”と晒されていました。そのワンピースのパタンナー、デザイナーは泣いていましたし、実は翌シーズンも同じようなものを販売する予定だったのですが中止しました。お客様に喜んでもらえるように、どこに出しても恥ずかしくない中身だと自信を持って売っているし、この数年はほとんど赤字。それでもこうなってしまうのは悲しいです」(須藤さん)

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