「元々片手袋のことは写メに撮る前から気になってはいたんです。あれだけよく見かけるのに、なぜかみんなにスルーされる、路上のニッチなアイテムとして。

 その片手袋を〈重作業類〉〈ゴム手袋類〉〈ファッション・防寒類〉〈お子様類〉とまずは目的や種類で分類し、さらに発見場所や状況で分けて体系化する本書の方法論は赤瀬川さんが源流にあるし、僕は釣り好きなので魚類の分類も参考にしました。そして(1)出会ったら必ず撮影する(2)絶対触らない(3)博愛主義(4)わざわざ探しに行かないというルールのもと、とにかくこの活動を真剣にやってみようと誓いを立てたんです。

 でもそれからは映画を観ていても片手袋が出てくるかどうか気になったり、妻に呆れられたり、片手袋から世の中を見るという視座を手に入れた半面、失ったものも少なくありません(笑い)」

 中でも出色は〈放置型〉と〈介入型〉という分類だ。本書では道などに無残に取り残された片手袋を放置型、それを見かねた人がガードレールや花壇の上に避難させた片手袋を介入型と呼び、後者を人の善意が可視化された存在と定義している。

「放置型が『落とす』や『捨てる』から生まれるとすれば、介入型は『拾う』や『見つけやすくする』という良心の動詞から生まれています。人間が介在してる分、わざわざジップロックに入れて電柱に括られていたり掲示板に貼り付けられていたり、面白いものも多い。

 ただ、よくよく考えると〈見ず知らずの人が落とした片手袋だから〉拾ってあげられるのかもしれないし、介入型の片手袋が何か月も同じ場所にあるのを見ると、『善意は届かない』ということの象徴にも思えてくる。

 逆に言うと相手に届こうが届くまいが、ついつい善意を発揮してしまうのが人間なのだ、とも考えられる。とにかく片手袋を手掛かりに人とは? 町とは? といくらでも考えを深めていけるのが、この研究のやめられないところなんです」

関連キーワード

関連記事

トピックス

岸信夫元防衛相の長男・信千世氏(写真/共同通信社)
《世襲候補の“裏金相続”問題》岸信夫元防衛相の長男・信千世氏、二階俊博元幹事長の後継者 次期総選挙にも大きな影響
週刊ポスト
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
女優業のほか、YouTuberとしての活動にも精を出す川口春奈
女優業快調の川口春奈はYouTubeも大人気 「一人ラーメン」に続いて「サウナ動画」もヒット
週刊ポスト
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
女性セブン
今回のドラマは篠原涼子にとっても正念場だという(時事通信フォト)
【代表作が10年近く出ていない】篠原涼子、新ドラマ『イップス』の現場は和気藹々でも心中は…評価次第では今後のオファーに影響も
週刊ポスト
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
韓国2泊3日プチ整形&エステ旅をレポート
【韓国2泊3日プチ整形&エステ旅】54才主婦が体験「たるみ、しわ、ほうれい線」肌トラブルは解消されたのか
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン