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2020.01.23 16:00  週刊ポスト

【著者に訊け】石井公二氏 落ちていた5000枚の片手袋の研究

「元々片手袋のことは写メに撮る前から気になってはいたんです。あれだけよく見かけるのに、なぜかみんなにスルーされる、路上のニッチなアイテムとして。

 その片手袋を〈重作業類〉〈ゴム手袋類〉〈ファッション・防寒類〉〈お子様類〉とまずは目的や種類で分類し、さらに発見場所や状況で分けて体系化する本書の方法論は赤瀬川さんが源流にあるし、僕は釣り好きなので魚類の分類も参考にしました。そして(1)出会ったら必ず撮影する(2)絶対触らない(3)博愛主義(4)わざわざ探しに行かないというルールのもと、とにかくこの活動を真剣にやってみようと誓いを立てたんです。

 でもそれからは映画を観ていても片手袋が出てくるかどうか気になったり、妻に呆れられたり、片手袋から世の中を見るという視座を手に入れた半面、失ったものも少なくありません(笑い)」

 中でも出色は〈放置型〉と〈介入型〉という分類だ。本書では道などに無残に取り残された片手袋を放置型、それを見かねた人がガードレールや花壇の上に避難させた片手袋を介入型と呼び、後者を人の善意が可視化された存在と定義している。

「放置型が『落とす』や『捨てる』から生まれるとすれば、介入型は『拾う』や『見つけやすくする』という良心の動詞から生まれています。人間が介在してる分、わざわざジップロックに入れて電柱に括られていたり掲示板に貼り付けられていたり、面白いものも多い。

 ただ、よくよく考えると〈見ず知らずの人が落とした片手袋だから〉拾ってあげられるのかもしれないし、介入型の片手袋が何か月も同じ場所にあるのを見ると、『善意は届かない』ということの象徴にも思えてくる。

 逆に言うと相手に届こうが届くまいが、ついつい善意を発揮してしまうのが人間なのだ、とも考えられる。とにかく片手袋を手掛かりに人とは? 町とは? といくらでも考えを深めていけるのが、この研究のやめられないところなんです」

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