ビジネス

客離れが伝えられるサイゼリヤ、羊肉の串焼きで捲土重来か

サイゼリヤは新メニュー開発にも積極的

 どんなに人気の飲食店でも、良い時があれば悪い時もある。苦境が伝えられるファミリーレストラン業界で「一人勝ち」とされてきたサイゼリヤにも逆風が伝えられる。しかし、事態は深刻かというとそうではないようだ。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が指摘する。

 * * *
 いつどこの店舗を訪れても、繁盛している。店内は活気に満ちているし、都心の店舗ではピークタイムを外しても行列ができていることもある。みんな大好き「サイゼリヤ」の話である。メディアの”ニュース”で見かけない日はない。ここ数ヶ月で「客離れが止まらない」とか「八方塞がり」という論調の記事を散見するが、内容を見ると数字のあら捜しをして逆張りの持論をぶつような行儀の悪い記事が目立つ。

「客離れ」の記事では「客数の前年比割れ」。「八方塞がり」の記事では「売上の伸び悩み」という切り口だったが、そもそもサイゼリヤは、近年の飲食チェーンとしては並外れて業績がよかっただけで、別に現在の業績が悪いわけではない。絶好調時の業績を引き合いに出して落ち込みを強調したり、なかには、成長市場である中国の店舗と営業利益率を比べる記事まである。我田引水にもほどがあり、品がない印象が強い。

 こうしたネガティブ記事にはたいてい「安売りモデルの限界」と「新しいヒット商品の欠如」というお約束の言いがかりがセットになっているが、サイゼリヤは高収入とは言えない層にも「高品質なイタリア料理を提供したい」という哲学があり、経営者も「値上げをするときは、自分が辞める時」と公言しているという。

 そもそも国内に1093、海外の411店の合計1500以上の店舗を構える巨大チェーンの経営陣がそうした構造上の課題に気づかないわけがないし、ただ手をこまねいているわけもない。

 昨年末に行われたメニュー改定で、そうした外野席からの野次を吹き飛ばし得るメニューが投下された。12月11日に投入された季節メニューの「やわらかお肉とごろごろ野菜のポトフ」と、12月18日にグランドメニュー入りした「アロスティチーニ」である。

 まず前者の「やわらかお肉とごろごろ野菜のポトフ」だが、実はサイゼリヤでは毎年冬になると「ポトフ」を投入してきた。2016年「野菜のあったかポトフ」、2017年「あったか具だくさんポトフ」、2018年「野菜とパンチェッタのあったかポトフ」。いずれも599円という値付けだった。

 ところが今年の「やわらかお肉とごろごろ野菜のポトフ」は899円。季節商品だから「値上げ」ではないが、例年より価格を上げた。もっともここには仕掛けがあって、メニューに「たっぷり2人前」「シェアしてどうぞ」と書かれているように、ボリューム大幅増。運ばれてきた皿には2本の鶏の手羽、牛スネ肉も塊肉が2つ入っている。野菜だけでなく、肉も「ごろごろ」が2人前だ。

 ボリューム感もあり、シェアすれば1人分の金額はリーズナブルになった。実際、発売直後、そこかしこの店舗で品切れになるほど好評だったという。季節商品という絶好のテストの場で一定の結果を出したと言っていい。

関連キーワード

関連記事

トピックス

初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン