ライフ

【与那原恵氏書評】変でダメな人々を通じて米の諸問題を描く

『十二月の十日』ジョージ・ソーンダーズ・著 岸本佐知子・訳

【書評】『十二月の十日』/ジョージ・ソーンダーズ・著 岸本佐知子・訳/河出書房新社/2400円+税
【評者】与那原恵(ノンフィクションライター)

 ジョージ・ソーンダーズは〈現代アメリカを代表する短編小説の名手であり、“作家志望の若者にもっとも文体を真似される作家”として知られる〉。ということを私はちっとも知らなかった。

 初めて読む作家だが手にとったのは、翻訳家の名が目に飛び込んだからである。世に言うところの「キシモト好み」の小説ならば、絶対面白いにちがいない。その予感通り、興奮する読書の時間を堪能したのだった。

 登場人物はみな変でダメな人たちだ。金もなく、悲惨な生活を送り、周囲の人々もどこかイカレているのだが、彼らなりの論理があって一本筋が通っており、妙に納得させられてしまう。しかし、そもそも物語自体がぶっ飛んでいる(翻訳家いわく、ほとんど「バカSF」と呼びたくなるような設定)。

 四十歳になった男が日記をつけ始める。女房と三人の子どもと暮らす彼は、金のやりくりに頭を悩ませながらも、おおむね平穏な毎日だ。じきにやってくる娘の誕生日に何かしてやりたいと思っているけれど、金がない。そんな時、スクラッチくじが大当たりするという幸運が訪れる。娘が欲しがっているプレゼントを用意できるし、誕生パーティも開いてやれる。そうとなったら、〈SG飾り〉を庭に飾り、わが家も人並みだと周囲に見せつけてやろうじゃないか!

関連キーワード

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト