奈々福の『愛宕山梅花の誉』に続いて、小痴楽は『粗忽長屋』。昨年12月30日放送の『落語ディーパー!』は『粗忽長屋』がテーマで、わさびが五代目小さんの「引きの芸」に言及すると、小痴楽は「自分は逆に面白さを“押す”演り方」と語っていたが、確かにそのとおり。八五郎の威勢の良さはむしろ談志の「主観の強い男」にも通じ、そのオッチョコチョイなキャラには愛嬌がある。熊五郎が行き倒れに「同じ煙草入れという証拠」を発見して「俺だ」と確信するという演出も見事。若々しくて楽しい『粗忽長屋』だ。

 トリのわさびは桶屋の倅の四郎吉が奉行に頓智頓才を認められて出世する『佐々木政談』。四郎吉の大人びた賢さを強調する演者が多いが、わさび演じる四郎吉は決して才気走って生意気な感じではなく、あくまでも子供らしい無邪気さに満ちていて実に可愛く、だからこそ知恵が際立つ。こういう四郎吉はわさびにしかできない。他の演者とは一味違う、清々しい『佐々木政談』だった。

●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『噺は生きている』など著書多数。

※週刊ポスト2020年2月21日号

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