芸能

中村梅雀の言葉「完璧に戦い抜いた時、やっと評価されました」

中村梅雀は「芝居」とどう対峙した?

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづる週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、役者家系に生まれた中村梅雀が、祖父や父とどのように芝居で対峙したかについて語った言葉をお届けする。

 * * *
 中村梅雀の祖父・中村翫右衛門は歌舞伎の世界から出て劇団前進座を創立。戦前から山中貞雄監督などの映画にも出演、多方面で活躍した名優だった。

「物心ついて舞台を観にいくようになった段階から、僕にとって中村翫右衛門という役者が断トツの存在でした。心にギュンギュンくるものを持っているんです。尊敬というよりアイドル。あんな人になりたいと思っていました。存在感から切れ味から、お客さんを魅了する声、動作、溜め。溜飲が下がるってこういうことだなというセリフ回し。全てにおいて、こんな人は観たことがない。他の役者はどうでもいいとすら思っていました。

 ただ、役者同士になったら、いまだにあんなに恐ろしい人はいません。《翫右衛門のムチ》という言葉が劇団にあるくらい厳しくて、スパルタなんですよね。絶対に教えないし、褒めない。

 でも、それ以上に自分自身に厳しい人でした。稽古初日には、台本を手放している。ホン読みでも、まだ誰もセリフを覚えていないのに覚えている。

 舞台に立っていない時は限界ギリギリまで疲れていて、出る直前まで寝ていたりするんです。それが舞台に出ていくと完全にアクセル全開状態でいけるところまでできあがっている。客席から観て《凄い》と思った以上に、凄かった。

 一時は真似しようと思いましたが、とうてい及ばないことが分かりました。追いつけない。ただ、僕の血の中には翫右衛門のDNAが入っている。拠り所は、それだけですね」

関連キーワード

関連記事

トピックス

各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン
理論派として評価されていた桑田真澄二軍監督
《巨人・桑田真澄二軍監督“追放”のなぜ》阿部監督ラストイヤーに“次期監督候補”が退団する「複雑なチーム内力学」 ポスト阿部候補は原辰徳氏、高橋由伸氏、松井秀喜氏の3人に絞られる
週刊ポスト
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“最もクレイジーな乱倫パーティー”を予告した金髪美女インフルエンサー(26)が「卒業旅行中の18歳以上の青少年」を狙いオーストラリアに再上陸か
NEWSポストセブン
大谷翔平選手と妻・真美子さん
「娘さんの足が元気に動いていたの!」大谷翔平・真美子さんファミリーの姿をスタジアムで目撃したファンが「2人ともとても機嫌が良くて…」と明かす
NEWSポストセブン
メキシコの有名美女インフルエンサーが殺人などの罪で起訴された(Instagramより)
《麻薬カルテルの縄張り争いで婚約者を銃殺か》メキシコの有名美女インフルエンサーを米当局が第一級殺人などの罪で起訴、事件現場で「迷彩服を着て何発も発砲し…」
NEWSポストセブン
「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」に出席された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年11月6日、撮影/JMPA)
「耳の先まで美しい」佳子さま、アースカラーのブラウンジャケットにブルーのワンピ 耳に光るのは「金継ぎ」のイヤリング
NEWSポストセブン
逮捕された鈴木沙月容疑者
「もうげんかい、ごめんね弱くて」生後3か月の娘を浴槽内でメッタ刺し…“車椅子インフルエンサー”(28)犯行自白2時間前のインスタ投稿「もうSNSは続けることはないかな」
NEWSポストセブン
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン