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2020.02.15 07:00  週刊ポスト

中村梅雀の言葉「完璧に戦い抜いた時、やっと評価されました」

中村梅雀は「芝居」とどう対峙した?

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづる週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、役者家系に生まれた中村梅雀が、祖父や父とどのように芝居で対峙したかについて語った言葉をお届けする。

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 中村梅雀の祖父・中村翫右衛門は歌舞伎の世界から出て劇団前進座を創立。戦前から山中貞雄監督などの映画にも出演、多方面で活躍した名優だった。

「物心ついて舞台を観にいくようになった段階から、僕にとって中村翫右衛門という役者が断トツの存在でした。心にギュンギュンくるものを持っているんです。尊敬というよりアイドル。あんな人になりたいと思っていました。存在感から切れ味から、お客さんを魅了する声、動作、溜め。溜飲が下がるってこういうことだなというセリフ回し。全てにおいて、こんな人は観たことがない。他の役者はどうでもいいとすら思っていました。

 ただ、役者同士になったら、いまだにあんなに恐ろしい人はいません。《翫右衛門のムチ》という言葉が劇団にあるくらい厳しくて、スパルタなんですよね。絶対に教えないし、褒めない。

 でも、それ以上に自分自身に厳しい人でした。稽古初日には、台本を手放している。ホン読みでも、まだ誰もセリフを覚えていないのに覚えている。

 舞台に立っていない時は限界ギリギリまで疲れていて、出る直前まで寝ていたりするんです。それが舞台に出ていくと完全にアクセル全開状態でいけるところまでできあがっている。客席から観て《凄い》と思った以上に、凄かった。

 一時は真似しようと思いましたが、とうてい及ばないことが分かりました。追いつけない。ただ、僕の血の中には翫右衛門のDNAが入っている。拠り所は、それだけですね」

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