SKYが“墜落(経営破綻)”したのは、「航空業界のホリエモン」と呼ばれていた西久保社長が安全性や公共性より、株式の時価総額(株価×発行株式数)にこだわったからである。
西久保体制の最大の売りは格安運賃だった。2009年10月、事前に航空券を購入した場合の割引運賃の下限を全路線とも9800円以下に設定。ドル箱の羽田─福岡線の普通運賃は1万6800円だったが、搭乗3日前までに予約する「前割3」の最低運賃を9800円としたのだ。おまけに7日前までの「前割7」だと9300円、21日前だと「前割21」で9000円という安さだ。
一方、ANA、JALの羽田─福岡線の普通運賃は3万6800円だったから、単純計算でSKYは4分の1ということだ。新幹線の東京─博多間の自由席(2万1210円)と比べても半値以下。この「9800円効果」でANA、JALからだけではなく、新幹線や高速バスの利用客がSKYに流れた。
その後、9800円路線は定着し、経営は黒字になった。西久保氏は米国の格安航空会社のサウスウェスト航空をビジネスモデルとしたが、リーマン・ショックで完全に息を吹き返した。デフレ時代に突入し、ローコスト経営のSKYに出番が回ってきたのである。
勢いに乗ったSKYは2010年11月、西久保氏が国際線への進出計画を発表。2011年春に、欧州のエアバス社と世界最大の旅客機エアバス「A380」を6機購入する契約を結んだ。さらに9機追加購入するとして、15機編成で世界の11都市と日本を結ぶ壮大な青写真を示したのだ。
だが、「A380」は1機280億円もする。SKYは国際線進出のため、JALを退職したパイロット、客室乗務員など470人を大量採用するという大風呂敷を広げたが、「A380」の大量購入という身の丈を超えた経営が引き金となり、2015年に民事再生法を申請する破目に陥ったのである。大手の攻勢や「A380」発注の取り消しに伴うトラブルも急激な経営悪化に拍車をかけた。