◆「国交省とのパイプ」で再建図る
破綻後は投資ファンドのインテグラルが50.1%、日本政策投資銀行と三井住友銀行が共同出資するファンドが33.4%、ANAホールディングスが16.5%を出資。政投銀出身の市江氏が社長、インテグラル代表の佐山展生会長とともに経営再建を進めてきた。
だが、佐山、市江の両氏は金融のプロだが、航空業界はズブの素人。規制でがんじがらめの航空業界は、国交省とのパイプがなければ身動きひとつ取れない。
少々乱暴な言い方になるのはお許しいただきたい。国交省航空局がすべての空港の発着枠を決める。航空局のご機嫌を損じたら、発着枠を割り当ててもらえない。民主党から自民党政権に戻ってから、JALが常にANAの後塵を拝しているのを見れば、よく分かる。
航空局が航空会社を意のままに操る絶大の権力を握ろうとするのは、「航空官僚の天下りのポストを確保するため」ともいわれている。
そこで、再建途上のSKYは国交省元航空局長の洞駿氏を顧問に迎え、指南を仰いだ。
その効果はすぐに現われた。2019年9月、2020年夏ダイヤからの羽田空港国内線の発着枠について、就航する6社への配分が決定した。既存枠のうち19枠を回収し、16枠を再配分。訪日客を地方へ誘客するための、いわゆる地方路線向けに充てた。この結果、JALは3枠、ANAは1枠減ったが、SKYは36枠から37枠へ1枠増えた。
「破綻したスカイマークに国内線の枠を増やすなんて」と航空関係者から驚きの声が上がったという。洞氏を顧問に迎えた効果である。
その後も、SKYの攻勢は続く。2019年11月29日、初の国際定期便となる成田─サイパン線の運航を開始した。成田を午前10時15分に発ち、現地時間の午後3時到着。サイパンを午後4時35分(同)に出発し、午後7時30分成田に到着する毎日1往復を運航することとなった。
「創業以来、初めて国際線の定期便。ようやく新しいステージに到達した」
成田空港で開いた記念式典で市江社長(当時)は、こう強調した。まさに悲願達成である。
さらに2020年2月から3月まで約1か月間、成田─パラオ線で国際チャーター便を運航中だ。チャーター便で運航を始め、将来的には定期便化を目指すという。サイパンへの定期便就航便に続き、パラオへのチャーター便で国際線事業の拡大に弾みをつけるシナリオだ。
佐山展生会長は「欧米に飛ばすことを実現したい」と意欲を燃やす。スカイマークは神戸空港を拠点としているため、同空港の規制緩和が実現すれば、神戸から国際線を飛ばす計画だ。
近年、関西での空港需要拡大を受け、2018年末に関西国際、大阪国際(伊丹)、神戸の関西3空港のあり方を話し合う3空港懇談会が再開したが、結論は出ていない。神戸空港の発着数の7割を占めるスカイマークの意向は、規制のあり方を巡る議論に影響を与えることになる。
佐山会長は「神戸空港の24時間化と国際化」を求めている。神戸空港の国際線が解禁になれば、サイパン、パラオ線の拠点を成田から神戸に移すことになろう。