『バス旅』第13弾のマドンナ(女性ゲスト)は田中律子だった。田中といえば、2013年3月からテレビ朝日の『路線バスで寄り道の旅』(当初は不定期放送、2015年4月からレギュラー番組)で徳光和夫とペアを組み、絶妙なさじ加減で人気を集めている。その田中が、太川蛭子コンビの『バス旅』に出演していた。当時は何気なく見ていた番組も時が経つと、逆に新鮮に感じたり、発見があったりするものだ。
今回は苦肉の策だったかもしれないが、地上波テレビはこれを機に、視聴率の上がらない時間帯に名作の再放送をしてもいいのではないか。
昨今、テレビが視聴率不振に苦しむ理由に、右にならえの編成、長時間特番を毎週のように制作するスタッフの疲弊、制作費の削減などが挙げられる。再放送すれば、浮いた資金を他の番組に回せる。同時に、疲れ切った製作陣をリフレッシュさせ、新たなアイデアを生む時間の余裕を与えることもできる。
民放各局には「ゴールデン帯で再放送なんてありえない」という常識やプライドがあるかもしれない。しかし、ネットコンテンツなどが台頭している今こそ、固定観念を払拭する良い時期ではないか。もちろん、再放送ばかりになっては制作者も育たないし、単なる懐古趣味に走っては意味がない。
あくまで番組の質向上のために、時にはゴールデン帯に再放送をする“勇気のある編成”も必要な時期に差し掛かっていると思う。
■文/岡野誠:ライター・松木安太郎研究家。著書に『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)。本人や関係者への取材、膨大な1次資料、視聴率などを用いて1980年代以降のテレビ史や芸能史を丹念に考察していると話題に。