ライフ

【森永卓郎氏書評】成功譚よりも失敗譚の方が得るものは多い

『世界「倒産」図鑑』/荒木博行・著

【書評】『世界「倒産」図鑑』/荒木博行・著/日経BP/1800円+税
【評者】森永卓郎(経済アナリスト)

 本書は、一世を風靡した日米欧25社の倒産の経緯を記した「図鑑」だ。本書は図鑑だから、それぞれの会社を一定のパターンに収めて記述している。まず、会社の興亡を倒産に至る経緯に重点を置いて、4~7ページにコンパクトにまとめる。そして、倒産劇から得られる教訓を「私たちへのメッセージ」として1ページで書く。その次のページで企業の幸福度の推移のグラフと教訓をさらに3点に要約したものを載せ、最後のページに企業の創業年や倒産時の従業員数などの企業データを記載する。これを25社分繰り返しているのだ。

 本書の一番素晴らしいところは、冒頭の倒産の経緯を記した本体の部分だ。有名企業が多いので、倒産の経緯については、私自身もある程度の知識はあったのだが、実に要領よく、バランスを失わずに書いている。一方、倒産から得られる教訓の部分は、その通りだと思うところは多いのだが、違和感を覚えるところもあった。もちろん、ここは著者の主観の部分だから、色々な意見があってよい。

 全体を読んで感じたのは、倒産の原因が実に様々だということだ。本書自体も、「過去の亡霊」型、「脆弱シナリオ」型、「焦りからの逸脱」型、「大雑把」型、「機能不全」型の5つに分けて編集されている。だが、実際の事例を読むとバブル崩壊やデジタル化、震災といった外部環境の急変が原因だったり、カリスマ経営者の独裁から逃れられなかったりと、倒産の原因は様々だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

東京都慰霊堂を初めて訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年10月23日、撮影/JMPA)
《母娘の追悼ファッション》皇后雅子さまは“縦ライン”を意識したコーデ、愛子さまは丸みのあるアイテムでフェミニンに
NEWSポストセブン
2023年に結婚を発表したきゃりーぱみゅぱみゅと葉山奨之
「傍聴席にピンク髪に“だる着”姿で現れて…」きゃりーぱみゅぱみゅ(32)が法廷で見せていた“ファッションモンスター”としての気遣い
NEWSポストセブン
渡邊渚さんの最新インタビュー
渡邊渚さんが綴る「PTSDになった後に気づいたワーク・ライフ・バランスの大切さ」「トップの人間が価値観を他者に押しつけないで…」
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
ルーヴル美術館での世紀の強奪事件は瞬く間に世界を駆け巡った(Facebook、HPより)
《顔を隠した窃盗団4人組》ルーブル美術館から総額155億円を盗んだ“緊迫の4分間”と路上に転がっていた“1354個のダイヤ輝く王冠”、地元紙は「アルセーヌ・ルパンに触発されたのだろう」
NEWSポストセブン
活動休止状態が続いている米倉涼子
《自己肯定感が低いタイプ》米倉涼子、周囲が案じていた“イメージと異なる素顔”…「自分を追い込みすぎてしまう」
NEWSポストセブン
松田聖子のモノマネ第一人者・Seiko
《ステージ4の大腸がんで余命3か月宣告》松田聖子のものまねタレント・Seikoが明かした“がん治療の苦しみ”と“生きる希望” 感激した本家からの「言葉」
NEWSポストセブン
“ムッシュ”こと坂井宏行さんにインタビュー(時事通信フォト)
《僕が店を辞めたいわけじゃない》『料理の鉄人』フレンチの坂井宏行が明かした人気レストラン「ラ・ロシェル南青山」の閉店理由、12月末に26年の歴史に幕
NEWSポストセブン
森下千里衆院議員(共同通信社)
《四つん這いで腰を反らす女豹ポーズに定評》元グラドル・森下千里氏「政治家になりたいなんて聞いたことがない」実親も驚いた大胆転身エピソード【初の政務三役就任】
NEWSポストセブン
ナイフで切りつけられて亡くなったウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(Instagramより)
《19年ぶりに“死刑復活”の兆し》「突然ナイフを取り出し、背後から喉元を複数回刺した」米・戦火から逃れたウクライナ女性(23)刺殺事件、トランプ大統領が極刑求める
NEWSポストセブン
『酒のツマミになる話』に出演する大悟(時事通信フォト)
『酒のツマミになる話』が急遽差し替え、千鳥・大悟の“ハロウィンコスプレ”にフジ幹部が「局の事情を鑑みて…」《放送直前に混乱》
NEWSポストセブン
『週刊文春』によって密会が報じられた、バレーボール男子日本代表・高橋藍と人気セクシー女優・河北彩伽(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
「近いところから話が漏れたんじゃ…」バレー男子・高橋藍「本命交際」報道で本人が気にする“ほかの女性”との密会写真
NEWSポストセブン