ライフ

古市憲寿氏「この世界にドラえもんはいない」と感じた名場面

古市氏は「神回」を選んだ

 2020年はドラえもんが産声を上げてから50周年。それを記念して、社会学者で作家の古市憲寿氏に、22世紀に伝えたいドラえもんの言葉、場面を聞いたところ、てんとう虫コミックス『ドラえもん』第6巻「さようなら、ドラえもん」が選ばれた。

 * * *
 僕が子どもの頃、すでに『ドラえもん』は長寿アニメになっていて、毎週決まった時間に放送されるのが「当たり前」だった。だから『ドラえもん』に始まりや終わりがあることなんて、想像さえしなかった。

『ドラえもん』には原作がある。それを知って、書店でてんとう虫コミックスを買い集めたのは、小学生になってからだ。そこで初めて、『ドラえもん』の始まりと終わりに触れた。

「さようなら、ドラえもん」は、1974年に最終回として執筆された作品である。特に印象的なのは最後のコマだ。がらんとした部屋で、のび太が穏やかな表情で座っている。

 子ども心に思ったのは、それが当たり前なんだよ、ということ。この世界にドラえもんなんていないから。彼との別れ(そして再会も)が経験できたのび太が羨ましくて仕方なかった。

【てんとう虫コミックス『ドラえもん』第6巻「さようなら、ドラえもん」とは】
 ジャイアンに追いかけられて自宅へ逃げ込んだのび太は、けんかに強くなる道具をドラえもんに要望する。ドラえもんは「ひとりでできないけんかならするな!」と叱った後、未来の世界へ帰ることを打ち明けた。最後の夜、のび太はジャイアンに殴られ続けても、「ぼくだけの力で、きみにかたないと…、ドラえもんが安心して…帰れないんだ!」と勝負を挑み続ける。ついにジャイアンが負けを認めた。「勝ったよ、ぼく」。傷だらけののび太はドラえもんに笑顔をみせた。

古市憲寿氏は藤子・F・不二雄氏好き(撮影/横田紋子)

●ふるいち・のりとし/1985年生まれ。東京都出身。情報番組のコメンテーター、雑誌の連載執筆など幅広く活躍。藤子・F・不二雄先生好きを公言し、『ドラえもん』に造詣が深い。作家としても活動。最新刊は小説『奈落』。

(C)藤子プロ・小学館

※週刊ポスト2020年3月13日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《総スカン》違法薬物疑惑で新浪剛史サントリー元会長が辞任 これまでの言動に容赦ない声「45歳定年制とか、労働者を苦しめる発言ばかり」「生活のあらゆるとこにでしゃばりまくっていた」
NEWSポストセブン
「第42回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
《ヘビロテする赤ワンピ》佳子さまファッションに「国産メーカーの売り上げに貢献しています」専門家が指摘
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《エプスタイン事件の“悪魔の館”内部写真が公開》「官能的な芸術品が壁にびっしり」「一室が歯科医院に改造されていた」10代少女らが被害に遭った異様な被害現場
NEWSポストセブン
香港の魔窟・九龍城砦のリアルな実態とは…?
《香港の魔窟・九龍城砦に住んだ日本人》アヘン密売、老いた売春婦、違法賭博…無法地帯の“ヤバい実態”とは「でも医療は充実、“ブラックジャック”がいっぱいいた」
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン
岐路に立たされている田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
“田久保派”の元静岡県知事選候補者が証言する “あわや学歴詐称エピソード”「私も〈大卒〉と勝手に書かれた。それくらいアバウト」《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「少女を島に引き入れ売春斡旋した」悪名高い“ロリータ・エクスプレス”にトランプ大統領は乗ったのか《エプスタイン事件の被害者らが「独自の顧客リスト」作成を宣言》
NEWSポストセブン
東京地裁
“史上最悪の少年犯罪”「女子高生コンクリート詰め事件」逮捕されたカズキ(仮名)が語った信じがたい凌辱行為の全容「女性は恐怖のあまり、殴られるままだった」
NEWSポストセブン
「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路とは…(写真/イメージマート)
【1500万円が戻ってこない…】「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路「経歴自慢をする人々に囲まれ、次第に疲弊して…」
NEWSポストセブン
橋幸夫さんが亡くなった(時事通信フォト)
《「御三家」橋幸夫さん逝去》最後まで愛した荒川区東尾久…体調不良に悩まされながらも参加続けていた“故郷のお祭り”
NEWSポストセブン
麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン