「死は未知だからこそ怖い。肉体的な苦痛への恐怖、己という存在が消滅することへの恐怖があります。臨死体験をすると、死後の世界のようなものを知る。それゆえ、死への恐怖がなくなったとか、死後にも続く何かがあると感じるようになったなど、死生観が変わったという人が多いのです」
死生観の変化は多くの体験者が口にすると大門さんも言う。
「やはり臨死体験をすると、死が怖くなくなるようです。“あの体験が死なのであれば、死もいいよね”と思えるようです。例えば臨死体験時にすでに亡くなったかたに会うと“あの人が待っていてくれる”と思えることで、死への恐怖が和らぐのです」
◆友人のたばこのにおいがしたら死の知らせが
死の直前を、あるいは死んだことを予感することを“虫の知らせ”という。日本看取り士会会長の柴田久美子さんは、これまで250人以上の看取りを通し、多くの不思議な現象を見聞きしてきた。虫の知らせもその1つだ。
「94才の女性を看取ったときのこと。彼女と息子さんは、親子仲が悪かったのです。息子さんが出かけた後、お母さんの容体が急変しました。
呼び戻そうと思ったそのとき、息子さんは自分から部屋に戻って来たのです。聞くと、車が故障し、“もしや母親に何かあったんじゃないか”と胸騒ぎがして帰って来たと言います。それでお母さんの最期に立ち会うことができ、ずっと体に触れながら寄り添っていました。後から“おふくろが教えてくれた気がした”と話してくれました」
ほかにも、喫煙者の友人が吸っていたものと同じたばこのにおいがしたと思ったら、電話で友人の死の知らせが入ったと言う人や、夢に仲のよかった友人が出てきたと思ったら、その日に亡くなっていたという人もいた。
「私も最初は不思議なこともあるなと思いましたが、そういう現場を多く見聞きしていると、死を前に本人がテレパシーを出しているのではないかと思うほか考えられなくなりました。
普段、私たちの脳は3~5%しか使っていません。しかし、死を前にして受け入れたときにすべての能力が開花するのかもしれません。科学的に証明しようとする学者もおり、『虫の知らせの科学』という本も実際に出版されています。そこには“虫の知らせ”は本人の出すテレパシーだと書かれています」(柴田さん)
※女性セブン2020年3月19日号