死の直前まで明るさと陽気さを失わなかったという多英子さん。その姿が目に焼き付いているからこそ、気落ちしていられないのだと島村氏は語る。
「まさに陽性キャラというのかな。気遣いもできて、誰からも愛されました。『政治家の女房』として満点。二度と見つけることのできない最高の家内でした。
寂しくないと言えば嘘になりますが、カラッとしていた家内の生き様に応えるためにも、僕は落ち込んでなんていられない。何が起きても、これまで通り、変わらず普通に過ごすこと。それを家内も望んでいると思うのです」
多英子さんの死後、島村氏が地元を回ると、誰もが「寂しい」と口にした。死別から7年経過したいまも、多英子さんを慕う後援会や地元の声は消えない。
そんな声に支えられて過ごす島村氏は、行く先々で妻の生きた痕跡を感じるという。
「家内が守った土地ですからね。今でもよく家内の話が出る。地元の後援会はもう、ほとんど家内のコミュニティみたいなものでしたから。話を聞いているだけで、いつも傍にいる気がしてくる。私は本当に恵まれていますよ」
亡き妻を想い続けることもまた、生きる道なのかもしれない。
※週刊ポスト2020年3月13日号