イメージ回復のために生み出された西武のスマイルトレイン。丸みを帯びた顔が特徴
「西武では2008年から運行を開始した30000系という車両があります。同車両は、その見た目から“スマイルトレイン”の愛称で親しまれていますが、開発段階から女性の意見を参考にしてきました」と話すのは、西武鉄道広報部の担当者だ。
従来、新型車両の製作は、鉄道事業者の車両部と車両メーカーによる打ち合わせを経て、具現化されていく。特急車両は各社のシンボルになるため、外観デザインも各社が力を込める。
一方、通勤用車両は輸送効率やエネルギー効率、また製造費の観点から以前の車両を踏襲するような形で開発は進められる。そのため、外観の細部に違いはあっても、大きく変更されることはほとんどない。
スマイルトレインの開発では、車両製作の部署のみならず幅広い部署から女性の意見を集め、それを開発に活かした。スマイルトレインは丸みを帯びた“かわいい”デザイン。本来、鉄道車両に“かわいい”といった要素はまったく必要ない。むしろ余計な概念といえるかもしれない。
“かわいい”という概念は、 感性によるものだから言語化することは難しい。あえて表現するなら、丸みを帯びたエクステリア、温かみと落ち着きのある室内空間およびインテリアへの気遣い、親しみが沸くような配色といった部分になるだろうか。そうした“かわいい”が女性視点によって新たに加えられた。
「2017年から運行を開始した40000系は、“スマイルトレイン”の流れを汲む車両です。こちらも女性の意見を十分に活かして開発が進められました」(西武鉄道広報部担当者)
西武が“スマイルトレイン”の開発において、女性の意見を参考にした背景には、それまでの西武にまとわりついていた負のイメージを払拭するという意味合いもあった。2004年、有価証券報告書虚偽報告事件が発覚し、西武は上場廃止に追い込まれていたからだ。