「各自治体が各々の判断で公表範囲を決めているので、当然ばらつきが出てくる。病院の風評被害対策を取るのか、市民の予防対策を取るのかという点で判断が分かれるでしょう。病院名を公表すれば患者は激減し、病院経営には大打撃です。病院が閉鎖されたら、地域の治療拠点がひとつなくなるわけで、それは自治体としても困る。
一方で、市民の予防対策を取るなら、病院名まで公表した方がいい。正解がない難しい問題で、同じ感染事例でも、国と都道府県で公表範囲が異なるケースもある」
1月末に府内初の感染者が出た京都府では、厚労省が「府内在住の20代女性」と、市町村名も国籍も伏せて発表したが、府は「京都市在住の中国人留学生」と踏み込んで発表し、入院先が京都市立病院であることも公表した。
先述した広島市や横浜市、太田市などの各自治体も、それぞれの判断で公表範囲を決めていたようだ。広島市に聞くと、こう回答した。
「コロナウイルスはあくまで飛沫感染するもので、空気感染はしないという点を重視しました。今回報じられている患者のケースで言えば、受診先の病院でもマスクを着用しており、不特定多数の来院者に感染させた可能性はないと判断して病院名の公表は控えました。
入院先を公表した理由は単純で、コロナ感染者は国が指定した『特定感染症指定医療機関』、あるいは都道府県が指定する『第一種、第二種感染症指定医療機関』に入院する決まりになっているのですが、広島市で当該するのは今回公表した病院しかないのです」(広島市健康推進課)