◆過去の感染症でみる「小康状態」

 そこで、SARS、韓国でのMERS、新型インフルエンザが小康状態に至るまでの流れを、簡単に振り返ってみよう。

【SARS】

 SARSは2002年11月に、中国広東省仏山(フォーシャン)市で流行が始まった。当時、WHOには、中国で妙な肺炎が発生している──とのレポートがなされていた。このレポートは中国語で書かれていて、タイトルだけが英語に翻訳されていた。残念ながら当時、情報伝達に用いられていたのは、英語とフランス語だけだったため、レポートの内容が翻訳して読まれることはなく、対応が後手に回ったとされる(※現在は中国語、アラビア語、スペイン語、ロシア語も用いられるようになっている)。

 その後、香港、台湾、ベトナム、シンガポール、カナダ、アメリカなどに感染が拡大した。2003年3月に、WHOは警告レベルを引き上げて、感染地域への緊急渡航自粛勧告を発令した。そして、この感染症は「世界規模の健康上の脅威」であると宣言した。

 これを受けて、感染地域各国では、徹底した患者の隔離や、海外からの入国者に対する検査が行われた。その結果、5月中旬にピークを迎えた感染は、6月下旬には急激に抑制された。

【韓国でのMERS】

 一方、MERSの韓国での感染拡大では、2015年5月中旬から感染した患者が出た。この患者が中東地域からの帰国者がいくつかの医療機関を受診したうえで入院したことで、あちこちの病院で二次感染が発生したとされる。6月上旬には感染が拡大していった。韓国では、最終的に38人の死亡者が発生した。

 このときも、感染者の隔離を徹底したことで、6月下旬には感染拡大のスピードが低下した。また、韓国では感染が医療施設内にとどまり、市中感染には至らなかった。このことも、早期の封じ込めにつながった背景にあるといわれている。

【新型インフルエンザ】

 また、2009年の新型インフルエンザの感染拡大では、4月にアメリカやメキシコで、ブタ由来のウイルスが、人から人に感染する例が複数確認された。感染は若年層、特に子どもを中心に拡大した。WHOは世界的な広がりに対して、警戒水準のフェーズ(段階)を引き上げ、6月12日よりパンデミックに移行することを宣言した。

 日本でも、5月から感染が始まったが、感染が拡大しつつあった大阪府や兵庫県で公立学校の臨時休校を行うなど、拡大防止措置が徹底されたことで、爆発的な感染拡大には至らなかった。日本では公的医療保険制度が整備されており、発症した人が少ない負担で医療施設を受診できたことも、拡大防止の背景にあったといわれている。

 その後、北中米や南米の地域を中心に、世界での感染拡大は続いた。秋には感染者数の把握が困難となり、WHOは12月に感染者数の公表をやめ、死亡者数のみを集計することとした。しかし2010年に入ると、流行の状況は、通常の季節性インフルエンザとそれほど変わらなくなり、死亡者の発生はピークを越えた。8月10日、WHOは世界的な大流行は終結したとして、パンデミックを解除した。

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン