一九七八年に劇団「2〇〇(後に3〇〇)」を旗揚げした。

「マスコミの方で役者として食っていきたいと思ったんですが、同期生の友達みんなから『書いてくれ』と言われて、おだてられて旗揚げしちゃったんです。

 父親には凄く反対されました。でも、二十五歳の時に書いた『夜の影』という作品を、たまたま出張で東京に来ていた時に観て凄く感動してくれて。『こういう芝居だったら許す』と言われ、今日に至る、という感じです」

 一九八三年の舞台『ゲゲゲのげ』で岸田國士戯曲賞を受賞、演劇人として評価を高める。

「ホステスのバイトを十一年くらいやっていまして、日頃付き合うことのない中年男性の悲哀を知りました。給料を届けるために働くだけ働いて、家族には邪険にされる。行き場のない男性たちが王様になりたくてお店に来ていた。当時予備校の講師をしていて、子供の頃いじめられっ子だった弟にも取材した。私自身もいじめられる子供で、理不尽な立場に身を置かざるを得ない犠牲者たちを救うには、と考えて浮かんだのが妖怪と人間のハーフで、自ら母親の腹をぶち破って生まれてきたダーティーヒーロー『鬼太郎』。彼なら信頼できると思いました。

 初日は十人くらいしかお客さんが入りませんでした。でも、楽日は三百人ぐらい。ドアが閉まらないくらい押し寄せてきました。ほとんどが口コミです。

 そこまではあまり知られていなかった劇団が、『ゲゲゲのげ』で知られるようになり、そこからは倍々にお客さんが増えていくという状況でした」

*出演舞台「有頂天作家」4月2~13日まで大阪松竹座で公演。

●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『すべての道は役者に通ず』(小学館)が発売中

※週刊ポスト2020年4月3日号

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