数年前、大阪の寿司屋でワサビをたくさんつけて出されたと韓国人がツイートしたところ、反差別派日本人が「ヘイト寿司屋」認定し同店を猛烈に叩いて不買運動を呼びかけ、店にも電話突撃をした。店の言い分は「海外の客はワサビやガリの増量を求めるので予め多くした」ということだが、差別主義者認定したら後には引かない。

 結局日本の反差別活動家界隈は、「日本人による差別」しか問題にしないのである。彼らは日本人による差別行為が発生した場合は、世界中のメディアにツイッターで通報する。某イラストレーターが、「そうだ、難民しよう!」の言葉とともにシリア難民を揶揄する絵を描いた時などがまさにその代表例だろう。あとは、欅坂46がナチスを彷彿とさせる(と彼らが主張する)衣装を披露した時も同様の行為を行った。

 今回の世界中で吹き荒れる差別に対し、同様のことを彼らがしているのかといえばそうでもない。結局「白人様による差別は悪い差別ではない」という意識があるのだ。あるいは韓国人が済州島に不法滞在したイエメン難民に対し、差別的な言動をしてもこれにも何も言わない。ドイツでアラブ系の男が集団レイプをしてもこれはスルー。「出羽守」であり続けるためには、こうした事態には目をつぶらなくては自身のこれまでの主張がすべて覆されてしまうと考えているのだ。

 こうした姿勢が和製リベラルが支持されない原因の一つなのである。「全差別主義者はゲス」という考えではなく、「日本人による差別は許さない」だけで一致団結したからこそ、欧米様による差別が続々報告されても論理的な批判ができずスルーするだけになっている。

●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など

※週刊ポスト2020年4月10日号

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