俳優のキャスティングも日本映画とはまったく異なり、韓国映画独特の特徴がある。
「昨今の日本は、キャストありきでテレビドラマの延長みたいな映画を作りがちです。韓国は1人の俳優が、テレビにも映画にも出るというわけではないんです。映画の方がドラマより完全に格づけが上。イ・ビョンホンなどはたまにドラマに出ますけど、それでも映画中心です。
『この人が出れば必ずヒットする』という俳優が数人いて、『パラサイト』のソン・ガンホ、『神と共に』のハ・ジョンウ、『国際市場で逢いましょう』のファン・ジョンミン、『王になった男』のイ・ビョンホンなどがその代表です。この4人は強烈な個性を持ち、俳優としての力量で観客を引っ張っているところがあります」
◆日本にはしっくりこない!?結末に独特の美学あり
韓国映画に見られる特徴的な国民性とはどのようなものなのだろうか。
「韓国の映画では、目を覆いたくなるような暴力シーンやエロティックなシーンが多いんです。テレビドラマがそれらをかなり厳格に制限している分、映画は映画館に行って特別に見るわけだから、ある程度許されるだろうという反動でしょうか。
徹底して細部まで描き切る。暴力でも性描写でも細部までとことん見せるという精神こそが、韓国映画が世界的に評価されている理由の1つだと思います。韓国人は自分の言いたいことは全部言わないと気がすまない、表現も全部出しつくさないと納得できない性分なんです」
ハリウッド映画に慣れた読者に向けて、韓国映画をより楽しむために知っておくべきことがあると康さん。
「『パラサイト』などのポン・ジュノ作品もそうなのですが、韓国作品のオチは、日本のようにすっきりとしたハッピーエンドや、うまく収まるものばかりではありません。必ず混沌とした場面を残します。これがしっくりこないという日本人もいますが、むしろそこにハマって中毒化している人が続出しているのも事実。そこを知って見ていただきたいですね」
見る人によって見方が変わるような終わり方にあえてしている点を頭に入れて見れば、きっと中毒になる。