4月、人通りが減った歌舞伎町一番街(時事通信フォト)

4月、人通りが減った歌舞伎町一番街(時事通信フォト)

 そうか――ついにその話かと思った。一連のコロナ騒動以降、とくに三月に入ってからは全然客が入っていなかった。店に客が来ないとかこれからどうなるのかなど店の将来の話に及ぶこともあったがあくまで愚痴程度、店は小さく酒とつまみ程度、従業員もいないし小塚さんも本業のデザイナーの仕事はある。主に広告やチラシのデザインだが、独身一人暮らしの小塚さんが生活するには十分だし大丈夫だと聞いていた。まして開店してまだ1年たらずだ。

「広告の仕事も少なくなってね、いまはまだ先々月分が入るからなんとかなってるけど、自粛ばかりでどうなるかわからない」

 小塚さんが言うには、パチンコのチラシやポスター、ポップの売り上げが減ったことが大きいという。一般チラシは安いが、やはりパチンコは金払いがいい。ポスティング用の「不動産売ります買います」的なチラシやリフォーム営業のチラシといった小口の仕事も減った。広告デザインと言っても華やかなのはごく一部で、小塚さんのような地道な細々とした仕事をこなすデザイナーが大半だ。

「デザイン仕事で生活して、店はトントンの収支、充実して楽しかったんだけどね」

 未曾有の有事、真っ先に影響を被るのはシビアな社会とダイレクトにつながっている自営業者と非正規労働者だ。それからしばらくして、じわじわとサラリーマンが首を絞められることになる。今回のコロナはまさに未曾有の有事だ。

「まあ嘆いてもしょうがないよね、山一ショックもリーマンショックも、3.11の時ですら大変は大変だけど、東京でサラリーマンやってる分にはどこか他人ごとだったよ。それが世界中に疫病が蔓延するなんてね」

◆コロナウイルスで帰省しなくちゃいけない場合もあるんだよ

 小塚さんは国立大学を卒業後、広告代理店に就職したエリートだ。芸大や美大卒でない小塚さん、社会人になってから独学でデザイナーとしての力をつけ、雑誌や書籍のエディトリアルデザインもその後転職した出版社で身につけた。個人事務所でデザインの仕事をしながら半分趣味でバーを開く、まさに理想の独身貴族だが、そんな幸せが一瞬で壊れてしまうのが天災というどうにもならない運命だということを、我々は先の震災で知ったはずだ。天災は誰が悪いわけでもない。天災が人災になることはあっても、端緒において誰の責任でもない。ましてや伝染病ならなおのこと、ペストしかり、エボラ出血熱しかりだ。

「見切りが早いと言われるかもしれないけど、早く見切らないと本当に詰んじゃうからね。人間、撤退時期は間違わないようにしないと」

関連記事

トピックス

真美子さんが完走した「母としてのシーズン」
《真美子さんの献身》「愛車で大谷翔平を送迎」奥様会でもお酒を断り…愛娘の子育てと夫のサポートを完遂した「母としての配慮」
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(クマの画像はサンプルです/2023年秋田県でクマに襲われ負傷した男性)
《コォーってすごい声を出して頭をかじってくる》住宅地に出没するツキノワグマの恐怖「顔面を集中的に狙う」「1日6人を無差別に襲撃」熊の“おとなしくて怖がり”説はすでに崩壊
NEWSポストセブン
「原点回帰」しつつある中川安奈・フリーアナ(本人のInstagramより)
《腰を突き出すトレーニング動画も…》中川安奈アナ、原点回帰の“けしからんインスタ投稿”で復活気配、NHK退社後の活躍のカギを握る“ラテン系のオープンなノリ”
NEWSポストセブン
11歳年上の交際相手に殺害されたとされるチャンタール・バダルさん(21)千葉県の工場でアルバイトをしていた
「肌が綺麗で、年齢より若く見える子」ホテルで交際相手の11歳年下ネパール留学生を殺害した浅香真美容疑者(32)は実家住みで夜勤アルバイト「元公務員の父と温厚な母と立派な家」
NEWSポストセブン
今年の”渋ハロ”はどうなるか──
《禁止だよ!迷惑ハロウィーン》有名ラッパー登場、過激コスプレ…昨年は渋谷で「乱痴気トラブル」も “渋ハロ”で起きていた「規制」と「ゆるみ」
NEWSポストセブン
アメリカ・オハイオ州のクリーブランドで5歳の少女が意識不明の状態で発見された(被害者の母親のFacebook /オハイオ州の街並みはサンプルです)
【全米が震撼】「髪の毛を抜かれ、口や陰部に棒を突っ込まれた」5歳の少女の母親が訴えた9歳と10歳の加害者による残虐な犯行、少年司法に対しオンライン署名が広がる
NEWSポストセブン
新恋人A氏と交際していることがわかった安達祐実
《新恋人発覚の安達祐実》沈黙の元夫・井戸田潤、現妻と「19歳娘」で3ショット…卒業式にも参加する“これからの家族の距離感”
NEWSポストセブン
キム・カーダシアン(45)(時事通信フォト)
《カニエ・ウェストの元妻の下着ブランド》直毛、縮れ毛など12種類…“ヘア付きTバックショーツ”を発売し即完売 日本円にして6300円
NEWSポストセブン
レフェリー時代の笹崎さん(共同通信社)
《人喰いグマの襲撃》犠牲となった元プロレスレフェリーの無念 襲ったクマの胃袋には「植物性のものはひとつもなく、人間を食べていたことが確認された」  
女性セブン
大谷と真美子夫人の出勤ルーティンとは
《真美子さんとの出勤ルーティン》大谷翔平が「10万円前後のセレブ向けベビーカー」を押して球場入りする理由【愛娘とともにリラックス】
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(秋田県上小阿仁村の住居で発見されたクマのおぞましい足跡「全自動さじなげ委員会」提供/PIXTA)
「飼い犬もズタズタに」「車に爪あとがベタベタと…」空腹グマがまたも殺人、遺体から浮かび上がった“激しい殺意”と数日前の“事故の前兆”《岩手県・クマ被害》
NEWSポストセブン
「秋の園遊会」でペールブルーを選ばれた皇后雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA)
《洋装スタイルで魅せた》皇后雅子さま、秋の園遊会でペールブルーのセットアップをお召しに 寒色でもくすみカラーで秋らしさを感じさせるコーデ
NEWSポストセブン