WHOテドロス事務局長の発言には世界中から疑問の声が上がった(写真/Avalon=時事)
「言葉の選び方にも、“日本流コミュニケーション”のマイナス面が凝縮していました。『徹底的に下支え』『笑顔を取り戻す』と抽象的な言葉を並べるのは日本のお家芸である以心伝心、忖度のコミュニケーション。『構築していきます』『努めてまいります』とぼんやりした未来形を使うことは、国民に今まで何もやってこなかったのかという印象を与える。さらに『かつてない規模の』『あらゆる政策を総動員』『強大な政策パッケージ』といった“根性ワード”がちりばめられ、モヤモヤ感だけが残りました」
都民に響かなかったのは小池都知事も同じで、3月25日の会見では「お急ぎでない外出はぜひとも控えていただくようにお願いを申し上げます」と述べるだけで、どんな医学的根拠やデータをもって外出自粛を要請しているのかわかりにくい。
「まさに大本営発表のような会見で一方的に話すだけになっています。そんな“発表型”の日本に対して、海外のリーダーは自分の言葉で国民に話しかける“対話型”といえるでしょう。危機的状況を包み隠さず公表し、これまで何をして今どうなっているという説明をした上で、今後の展望を語る。それによって国民からは信頼感を得られ、エモーショナルな発言に皆が励まされるのです」(前出・岡本氏)
もっとも、海外のリーダーにも、言葉を発するたびに信頼を失っていった人物がいる。世界194の加盟国を束ねる世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長だ。
WHOが緊急事態宣言をようやく出した1月30日、「中国政府が卓越した対策を講じたことを称賛する」と讃えるなど、その言動が“中国寄り”とされたテドロス氏については、「事態を過小評価していたことが感染拡大を防げなかった」として「即時辞任」を求める署名が世界中から約56万件以上も集まっている。
言葉でウイルスは撃退できないが、そこに生きる人々を救うことはできる。だからこそ危機下のリーダーの言葉ほど、国民の心に強く残るのだ。
※週刊ポスト2020年4月17日号