理髪店で権力バトル(時事通信フォト)
3月28日に発令したばかりの新型コロナの「基本的対処方針」の内容を改定し、緊急事態宣言で自宅で過ごす国民に不可欠なサービスとして「事業継続を要請する」業種を指定した。そこに百貨店、レストラン、喫茶店などと並んで「理美容」(理容室と美容院)を盛り込んだのだ。
理髪店は、東京都のリストでは休業要請の対象、政府のリストでは事業継続要請の対象と真逆の扱いになった。
そうやって準備を整えたうえで、安倍首相は冒頭の会見で「休業させない」と言い切ったのだ。小池氏は直ちに行なうはずだった休業要請を先送りし、政府との調整を余儀なくされ、娯楽施設などへの休業要請が大幅に遅れることになった。
10日には、東京都が休業実施を要請する対象業種を発表し、理美容店の営業は認められたが、休業の是非は措くとして、安倍政権が理髪店をそこまで特別扱いするのはなぜか。
全国に理容室は約12万店、美容院は約25万店。産業分野としてみると決して大きいわけではないが、多くの議員が選挙になれば業界の支援を受け、自民党の有力な支持基盤として知られる。元経産官僚で『日本人を縛りつける役人の掟 「岩盤規制」を打ち破れ!』などの著書がある原英史氏が、理美容業界と政界の結びつきを解説する。
「理容や美容業界は政治力が強い。全国に多くの店舗があり、理髪店の店主は昔から地域の商店会のメンバーというケースが多い。政治家にすれば商店会の票のとりまとめにつながる。理容、美容関連の生活衛生議員連盟は自民党でも力がある議連で、そのメンバーの政治家が役所に働きかけ、規制緩和がなかなか進まない現実がある」