それを受けて首相は4月5日の日曜日、菅義偉・官房長官、西村康稔・コロナ担当相、腹心の今井尚哉・総理補佐官らを官邸に招集し、緊急事態宣言の発令を決断する。
「総理からは“小池に行き過ぎた規制をさせるな”という指示が出されたそうです。官邸の新型コロナ感染症対策本部にも伝えられた」(官邸官僚)
しかし翌6日、官邸が恐れていた事態が起きる。「首相が緊急事態宣言を発令する意向を固めた」という一報が流れると、東京都は待ってましたとばかりに「緊急事態措置(案)」として休業を要請する業種をまとめたリストを発表する。
そのなかに「理髪店」が含まれていた。閣内で真っ先に批判の声を上げたのは安倍側近の衛藤晟一・一億総活躍相だ。
「理髪店に対する規制はあるはずがない」
衛藤氏は全国理容生活衛生同業組合連合会の支援を受けていることで知られる。東京都との調整役である西村大臣も、小池都知事にリストの見直しを申し入れた。
ところが、ただちに休業を要請する方針だった小池氏はクビを縦に振らず、調整は難航する。“小池が強行するかもしれない”──慌てた官邸は非常手段を取る。