◆江戸の庶民は欧米の専門家レベル

 知られざる「数学大国」といえる日本だが、その原点といえるのが江戸時代の数学者・関孝和だ。

 関は中国から伝わった数学を「代数学」(数字の代わりに記号を用いて方程式を解く方法)として発展させた。上野氏が語る。

「江戸時代に中国から入ってきたのは、今で言う方程式で未知数xを1つ使う中学レベルの数学でした。関はxの他にyやzを使い、最終的にyやzを消去することでxの解を導く新たな方法を作り出した。当時のヨーロッパより進んだ内容でしたが、江戸時代の一般の人々はこれを勉強してマスターしていきました」

 この時代、和算(江戸時代の数学)においても家元制度が発展した。関を元祖とする「関流」は江戸を中心に発展した算術の最大派閥で、参勤交代の武士らが入門したことから全国に普及。その成果は、問題と解答を記して絵馬に仕立て、各地の寺社に奉納された「算額」に見ることができる。

「だからこそ、明治以降に西洋数学が入ってきた際、代数学を日本人は簡単に理解することができたのです」(上野氏)

 現代の日本人数学者にも、300年以上前の天才数学者の命脈が保たれている。

※週刊ポスト2020年4月24日号

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