では、どんなことに気をつければよいだろう。
「睡眠を促すのはメラトニンというホルモン。これが夜、しっかり分泌されることが快眠の鍵を握っています。メラトニンは光に弱いのです。朝日を浴びて目覚め、日中も太陽や明るい光の下で活動し、分泌が抑制されている時間を確保すると、夜しっかり分泌されます。光を浴びてから約14時間後に分泌が始まるサイクルを持っていますが、そのときに照明が明るすぎると抑制され続けて眠れないので、夜はやわらかなオレンジ色の明かりがおすすめ。また日中、暗い室内に閉じこもっていると、メラトニンがダラダラ出続け、だるくて居眠りするようなことにもなります。
つまり日中光の下で活動、夜は光を弱めて眠る準備をするというリズムがとても重要なのです。これがリタイア後のかたにはなかなか難しい場合もありますが、でも意識することで不眠が解消することもよくあります」
眠るときの環境も大切だ。眠りが浅く、ちょっとした刺激で目が覚めてしまうので、寝具にも注目したい。
「横になったとき、背骨や頸椎の弯曲を敷き布団や枕がしっかり支えることで全身がリラックスします。合わない寝具では体に力が入り、よい睡眠が取れないことも。寝具の劣化や寝る人の筋力や体形の変化で体に合わなくなってきても、毎日使う寝具の不具合には意外に気づけないもの。寝具は定期的なアップデートが必要です。特に高齢の親御さんなら、家族が一緒に見直すといいですね」
これからエアコンと併せた温度調節も必要になる季節。この機会に、老親の寝具を見直してみてはいかがだろう。
【Profile】
◆有竹清夏さん/埼玉県立大学健康開発学科准教授/東京医科歯科大学医学部卒業。睡眠中の生理機能について研究。運動が睡眠中の生理機能や認知機能に与える効果のメカニズムの解明に取り組む。地域包括に向けた高齢者の睡眠マネジメントに関する研究も行っている。