2009年、リーマン・ショックを受けた経済対策で当時の麻生政権が打ち出した定額給付金の案内状(時事通信フォト)

2009年、リーマン・ショックを受けた経済対策で当時の麻生政権が打ち出した定額給付金の案内状(時事通信フォト)

 また「評価しない」と答えた人の意見を見ていくと、国民に隈なく一律給付する方針を示したことで、かえって不公平感が生まれていることに気づく。

「収入が減らない正社員、その配偶者、お年寄りや子どもにも給付する一律給付の意味が不明。ただのお小遣いで所得制限なしの給付も不公平極まりない」(60歳男性)
「子どもにも1人10万円だとすると、子どもがいない世帯との間で極めて公平性に欠ける。収入が減っていない5人世帯に50万円も支給されるとしたら、その世帯は臨時ボーナスをもらったようなもの」(40歳男性)
「高所得者と明日の家賃やご飯にも困っている人と同じなのはおかしい。また、議員や公務員は税金で食べているんだから、今の状態で満額もらうのはどうか」(53歳女性)
「子どもがいて家のローンもある一家の大黒柱にとっての10万円は『焼け石に水』。働かずに年金生活している人にとっての10万円は『棚からぼた餅』。10万円の価値が違いすぎる」(57歳女性)

 中には「私は公務員で一銭も給料は減っていない。困っている人を優先してください」(41歳男性)など、給付を辞退したいとする意見もあったが、ジャーナリストの山田稔氏は、「そうした差別や戸惑いが生まれるのも、政府が説明責任を果たしていないから」と指摘する。

「すべての国民が対象というのであれば“排除の論理”は通用しませんが、麻生財務大臣は『希望者の申告を受けて…』と、この期に及んで一律給付とは相容れない発言をしています。だから、高額所得者や公務員、年金受給者はどうなるのか、また在日外国人や在外邦人、受刑者にも給付するのかといった様々な声が溢れてしまうのです。

 それも元をたどれば安倍首相が10万円という給付額の根拠や給付対象を会見で明確にしていないからです」

 前出の森永氏は「そもそも方針転換によって給付金の目的も変わった」と話す。

「30万円給付は生活困窮者の救済が目的でしたが、今回の10万円は感染拡大防止の協力金、いわば当面の“巣ごもり協力金”なのです。自粛期間中の生活資金援助なので、高額所得者などを排除する必要はないと思います。ただ、これで終わりではなく、コロナが収束するまで第二弾、第三弾と経済対策を打ち続けなければ景気回復は望めません」

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