国内

有名人の感染報道は「身元のわかる犠牲者効果」と心理士

沖縄渡航前に感染との説も(時事通信フォト)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、新型コロナ感染への注意喚起について考察。

 * * *
 ベッドに寝たまま鼻カニューレをつけて酸素療法を受けている患者や、人工呼吸器をつけて力なく横たわる患者の映像が情報番組で流れている。だがそんな映像の中でも、気に留めて見るのは芸能人やアスリートなど著名人であることが多い。

 先日は、新型コロナウイルスに感染したタレントの石田純一さんの、酸素チューブをつけ入院している姿が報じられた。目にするだけで痛々しい。同時に、自身がコメンテーターを務める文化放送のラジオ番組で電話インタビューに答えたという音声も流された。

 その声に力はなく、息をするのも苦しそうなことがわかる。38.8度の熱があったというが、それでも「みなさん、どうぞ油断せずに」と語りかけていた。10日に沖縄に出張、11日にゴルフもしていたという石田さんは、14日に肺炎の症状が出て入院、陽性と判定された。妻の東尾理子さんの「心配な状態が続いている」というコメントもあり、依然その病状が案じられている。

 今回の新型コロナではこれまでにも、芸能界やスポーツ界などで活躍する多くの人たちが感染を公表。志村けんさんの感染が報道された時は、誰もがその病状を心配した。訃報を聞いて耳を疑い、国中が悲しみショックを受けた。4月に入ってからは、お笑いトリオ「森三中」の黒沢かずこさん、テレビ朝日のアナウンサーで『報道ステーション』メインキャスターの富川悠太さんなどの感染がメディアで取り上げられた。

 自宅待機していたが症状が悪化、一時は集中治療室に入り治療を続けていたイギリスのボリス・ジョンソン首相は無事に退院。すぐにビデオメッセージを公表。自身の治療にあたった医療従事者らに感謝を述べたが、やつれた姿がコロナの怖さを物語っていた。

 感染の報にファンや支持者なら心配するのは当然だが、自分とは直接関係がなくても、テレビや映画、スポーツ中継などで目にしたことのある人物が感染したと聞けば、見知らぬ誰かが感染したより気になってしまうのではないだろうか。そこには、「身元のわかる犠牲者効果」が働いているのだと思う。

 人には、誰なのかわからない人や集団の危機・困難より、誰なのかわかっている人や特定できる集団が危機・困難に陥っている場合の方が強く反応し、思いやりを見せたり助けてあげたいと手を差し伸べる傾向があることがわかっている。例えば募金でも漠然としたものより、「○○ちゃんを救う会」など顔がわかる方が援助しようという気持ちが強くなる。

「身元のわかる犠牲者効果」とはひどいネーミングなのだが、今回の感染症のような場合、一般に向けて注意喚起を促す強いメッセージにもなり得るだろう。感染理由や経緯がどうであれ、石田さんが病床から「気をつけて。それでもなおかつ、もう一回気をつけて」と人々に呼び掛けたようにだ。

 今はもう、いつ誰が感染してもおかしくない状況だ。感染せぬよう、犠牲者をこれ以上出さぬよう、まさに「気をつけて。それでもなおかつ、もう一回気をつけて」。

関連記事

トピックス

違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
「よだれを垂らして普通の状態ではなかった」レーサム創業者“薬物漬け性パーティー”が露呈した「緊迫の瞬間」〈田中剛容疑者、奥本美穂容疑者、小西木菜容疑者が逮捕〉
NEWSポストセブン
1泊2日の日程で石川県七尾市と志賀町をご訪問(2025年5月19日、撮影/JMPA)
《1泊2日で石川県へ》愛子さま、被災地ご訪問はパンツルック 「ホワイト」と「ブラック」の使い分けで見せた2つの大人コーデ
NEWSポストセブン
男が立てこもっていたアパート
《船橋立てこもり》「長い髪に無精ヒゲの男が…」事件現場アパートに住む住人が語った“緊迫の瞬間”「すぐ家から出て!」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《美女をあてがうスカウトの“恐ろしい手練手管”》有名国立大学に通う小西木菜容疑者(21)が“薬物漬けパーティー”に堕ちるまで〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者と逮捕〉
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で「虫が大量発生」という新たなトラブルが勃発(写真/読者提供)
《万博で「虫」大量発生…正体は》「キャー!」関西万博に響いた若い女性の悲鳴、専門家が解説する「一度羽化したユスリカの早期駆除は現実的でない」
NEWSポストセブン
江夏豊氏が認める歴代阪神の名投手は誰か
江夏豊氏が選出する「歴代阪神の名投手10人」 レジェンドから個性派まで…甲子園のヤジに潰されなかった“なにくそという気概”を持った男たち
週刊ポスト
キャンパスライフを楽しむ悠仁さま(時事通信フォト)
悠仁さま、筑波大学で“バドミントンサークルに加入”情報、100人以上所属の大規模なサークルか 「皇室といえばテニス」のイメージが強いなか「異なる競技を自ら選ばれたそうです」と宮内庁担当記者
週刊ポスト
前田健太と早穂夫人(共同通信社)
《私は帰国することになりました》前田健太投手が米国残留を決断…別居中の元女子アナ妻がインスタで明かしていた「夫婦関係」
NEWSポストセブン
子役としても活躍する長男・崇徳くんとの2ショット(事務所提供)
《山田まりやが明かした別居の真相》「紙切れの契約に縛られず、もっと自由でいられるようになるべき」40代で決断した“円満別居”、始めた「シングルマザー支援事業」
NEWSポストセブン
新体操「フェアリージャパン」に何があったのか(時事通信フォト)
《代表選手によるボイコット騒動の真相》新体操「フェアリージャパン」強化本部長がパワハラ指導で厳重注意 男性トレーナーによるセクハラ疑惑も
週刊ポスト
1990年代にグラビアアイドルとしてデビューし、タレント・山田まりや(事務所提供)
《山田まりやが明かした夫との別居》「息子のために、パパとママがお互い前向きでいられるように…」模索し続ける「新しい家族の形」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【国立大に通う“リケジョ”も逮捕】「薬物入りクリームを塗られ…」小西木菜容疑者(21)が告訴した“驚愕の性パーティー” 〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン