芸能

作法を大切にした樹木希林さんが愛読 アイヌに関する随筆集

樹木さんの愛読書とは?

 新型コロナウイルスの脅威にさらされ、自然と人々の心も蝕まれていく。こんなとき、強くたくましく生きた樹木希林さんならどう行動しただろうか。

 2018年9月に亡くなった樹木希林さん(享年75)。言葉にこだわりを持ち、言葉の力を信じていた樹木さんは大の読書家でも知られた。しかし、自宅に遺されていたのは、100冊だけだった。樹木さんは100冊以上の本を手元に置くことはなかった。持っておきたい本ができたら、100冊の中から1冊を誰かにプレゼントしたというのだ。

 書斎に遺した最後の100冊にはどんな本があったのだろうか、樹木さんの考えの「源泉」ともいえる愛読書の中から、2冊を紹介する。

◆『ユーカラの人びと』金田一京助著

「菓子などの手土産は受け取らない」「いいねと言われたものはその人にあげる」など、樹木さんにはマイルールがあった。どんな一流レストランへ行っても、食べきれなかったものを折り詰めにしてもらい持ち帰るのも樹木さん流だった。

 作法を大切にした彼女が大切に読んでいた金田一京助の『ユーカラの人びと』(平凡社)。国語辞典の編者として誰もが知る金田一は、アイヌ語、アイヌ文学研究の第一人者でもある。ユーカラとはアイヌの叙事詩。単身北海道に渡った金田一とユーカラの世界の人々との交流を描く随筆集だ。アイヌの人々は飲み干した汁椀をなめ、指でぬぐい、それを自分の毛や着物になすりつける作法がある。得たものを自分の守護神へ与える行為だという。“ものを賜る”という心持ちが、そのものから御霊に触れるということに外ならなかったと本にはある。

 樹木さんと40年以上にわたって親交があり、彼女が残した100冊と彼女とのエピソードをまとめた『希林のコトダマ』(芸術新聞社)の著書がある椎根和さん(しいね・やまと 78才)は、こう話す。

「希林さんは、残りものを折に詰めて、と言うとき、『御霊に触れたいから…』といつも心の中で言っていたのだろう。そんな希林さんの振る舞いの奥底にあった思いが、『ユーカラの人びと』を読んでわかった気がします」

関連記事

トピックス

「新証言」から浮かび上がったのは、山下容疑者の”壮絶な殺意”だった
【壮絶な目撃証言】「ナイフでトドメを…」「血だらけの女の子の隣でタバコを吸った」山下市郎容疑者が見せた”執拗な殺意“《浜松市・ガールズバー店員刺殺》
NEWSポストセブン
連続強盗の指示役とみられる今村磨人(左)、藤田聖也(右)両容疑者。移送前、フィリピン・マニラ首都圏のビクタン収容所[フィリピン法務省提供](AFP=時事)
【体にホチキスを刺し、金のありかを吐かせる…】ルフィ事件・小島智信被告の裁判で明かされた「カネを持ち逃げした構成員」への恐怖の拷問
NEWSポストセブン
グラドルデビューした渡部ほのさん
【瀬戸環奈と同じサイズ】新人グラドル・渡部ほのが明かすデビュー秘話「承認欲求が強すぎて皆に見られたい」「超英才教育を受けるも音大3か月で中退」
NEWSポストセブン
2人は互いの楽曲や演技に刺激をもらっている
羽生結弦、Mrs. GREEN APPLE大森元貴との深い共鳴 絶対王者に刺さった“孤独に寄り添う歌詞” 互いに楽曲や演技で刺激を受け合う関係に
女性セブン
無名の新人候補ながら、東京選挙区で当選を果たしたさや氏(写真撮影:小川裕夫)
参政党、躍進の原動力は「日本人ファースト」だけじゃなかった 都知事選の石丸旋風と”無名”から当選果たしたさや氏の共通点
NEWSポストセブン
セ界を独走する藤川阪神だが…
《セの貯金は独占状態》藤川阪神「セ独走」でも“日本一”はまだ楽観できない 江本孟紀氏、藤田平氏、広澤克実氏の大物OBが指摘する不安要素
週刊ポスト
「情報商材ビジネス」のNGフレーズとは…(elutas/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」は“訴えれば勝てる可能性が高い”と思った》 「情報商材ビジネス」のNGフレーズは「絶対成功する」「3日で誰でもできる」
NEWSポストセブン
入団テストを経て巨人と支配下選手契約を結んだ乙坂智
元DeNA・乙坂智“マルチお持ち帰り”報道から4年…巨人入りまでの厳しい“武者修行”、「収入は命に直結する」と目の前の1試合を命がけで戦ったベネズエラ時代
週刊ポスト
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン