24時間営業するものだと思っていたコンビニもコロナで一部店舗が臨時休業に(時事通信フォト)
誰もが知っている人気声優や引く手あまたの声優ならともかく、ほとんどの声優が副業やアルバイトを掛け持ちしているのは事実である。そもそも考えてほしい、多くの声優、年に数作、数キャラしか仕事をしない声優がアニメやゲーム、外画と呼ばれる外国映画の吹き替えの仕事など、いわゆる声の仕事だけで食えているはずがないのだ。声優は各データベースに載っている数だけでも1500~2000人、NHKによれば実際は1万人はいるとされている。裏名義や自称のネット声優、地方のナレーターなども含むとすれば当たらずといえども遠からずだろう。
「それに売れてる売れてないじゃないんだよね、声優は。そりゃ売れてるのが一番だけど、基本仕事があるかないか。売れてなくてもマイナーでも仕事がひっきりなしの声優もいる。裏方だからさ、ある意味、職人だな」
多くはアニメ=声優と捉えがちだが、声優仕事の大部分はボイスオーバー、音声案内、イベントなど声のなんでも屋だ。それすら限られた声優で奪い合うため、あぶれた彼ら、彼女らはアルバイトで生計を立てている。いや、実はそれなりに知られた人ですら、仕事が少ない、減った声優はこっそり副業をしているのが現実だ。といっても全員が食うや食わずというわけでもなく、音響関係や声優事務所のスタッフなどはもちろん、運良く理解ある会社に恵まれて一般企業のサラリーマン兼声優だったり、資格持ちだと看護師や薬剤師をしながらパートで、という場合もある。
「でもバイトで何とかなってれば表で声優って名乗れるからね。専業で食えてない奴も。声優名鑑に載ってる声優もだよ」
ロンドさんの芸名をネット検索でググればたくさんの検索結果が出る。ほとんどはデータベースの類だが、声優名鑑やタレントデータベースの類に載っているからといってそれだけで食べていけている人は限られている。
「こんな俺でも有名アニメにたくさん出たよ。ほとんどが兵士AとかサラリーマンAとか部下Aとか不良Aだったけど、それだけじゃなく脇役だけどちゃんと名前のある重要な役をやったこともあるし。あのときはイベントとかも出たりして楽しかったよ。自分としては20年もやってこれりゃ上出来です」
◆このままバイトがないと声優でいられなくなる
プロの声優として、脇役だろうと端役だろうと有名作品の声をあてられるのは声優志望者のごくごくわずかだ。それを成し遂げ続けたロンドさんは凄いし、だからこそ私もかつて起用させていただいた。もちろんロンドさんには表の芸名とは別の裏名もある。ロンドさんはジャンプアニメから国民的アニメまで、端役ならなんでもござれの声の職人だ。
「最初の大手事務所のころは仕事があったけど、やっぱり小さいところを渡り歩くと俺みたいのは厳しいね。まして今じゃフリーの身、フリーってのは二種類あってね、自分で稼げるからフリーってのと、どこからもお呼びがないからフリーってのがいる。俺は後者、まあ、色々と下手打ったのもあったんだけどね、若手にも偉そうな態度とって、次々追い越されちゃ世話ないよな」
その辺、自虐を混じえながらも細かくは語らないロンドさん。私も事情はそれなりには知っているが深く追求はしない。幸いにしてよほどの売れっ子声優でもない限り、アイドルや芸人ほどは「あの人はいま」扱いされないのが声優だ。いきさつについて突っ込んでも問題はないが、今日は別にそんな業界裏話を取材したいわけではない。ロンドさんの実際の生活を支えている副業やバイトの件と、コロナの影響だ。
「それが問題なんだよ。今まで夜勤で入ってた仕事があって、それが楽で美味しい仕事だったんだ。なのに時短で営業時間が短くなってその夜勤仕事が無くなった。昼間のシフトだと時給は安いしガッツリ入れない、一応声の仕事が入ることもあるしね。で、そうこうしているうちに先週で休業さ」