「マスクはかさばる。欲しいやつは何万枚とか簡単にいうが、かさばる品物だということをわかっていない。でかい段ボールで運ばれてくるんだ。置いておくには保管場所が必要になる。場所まで確保していたら割に合わない。だから買い手は都内か近県、すぐに引き取りに来れるやつ限定だ」
ドラッグストアのように倉庫か広い事務所でもあれば話は別だが、稼業の人たちがシノギになるからと大きく商売するには、案外ハードルが高いらしい。
「今の仕入れは1枚50円。仕入れ先の元値は量によって違うが35円〜40円程度だろう。それを50円で買い60〜70円で売る。買ったやつは小分けにして5枚500円に消費税くらいで売るんだろう」
このマスクは、不織布の三層構造、ウイルス飛沫99%カット、レギュラーサイズ、色は白。1枚50円といえば報じられている今の仕入れ値と変わらない。稼業といえど現状は厳しい。仕入れはできても、安値で購入できないのが現実なのだ。
「1枚50円で1箱の仕入れ値は2500円、それを3000〜3500円で売る。値段は相手によりけりだ」
儲けは1万枚で10万円から多くて20万円。
「地方の小さな薬局や雑貨店が数万枚欲しいといってくるんだが、レンタカー代、高速代、ガソリン代を考えているのかね。10万枚欲しいというやつもいるが本当に運べるか、どこに置くのかって話だ」
かさばるマスクは、そう簡単に右から左へ売り買いできる代物ではないという。注文してきたはいいが金が用意できない、置き場所に困ったなどでキャンセルでもされたら商売にならない。買い手は選ばなければならないのだ。
「大口の注文には、最初に半金を払わなければ発注しないと答えている。マスクでシノギといわれても、実際そんな簡単には儲かりませんよ」
中国では不織布不足で、生産が今までの10分の1ほどになるらしいという情報があると幹部は話す。国内でも材料が追い付かず、生産工場が少ないなど様々な問題がある。マスクの値段は、この先まだまだ上がるかもしれない。