文科相補佐官時代に大学入試改革を主導した鈴木寛教授
京都工芸繊維大学は、「ダビンチ(AO)入試」という独自の選抜方式を採用していて、コンピュータを使ったスピーキングとライティングのテストを実施しています。民間試験の利用ではなく、独自に英語4技能の試験を実施していて立派だと思います。
しかし、国公立の約9割が英語4技能の試験を実施していない。私立は4割が導入しているので、国公立より進んでいますが、6割が未導入です。入試改革批判に対する反動で、むしろ後退してしまった感があります。英語4技能を実施しない大学は、国際的人材の育成には関心がないとみなさざるをえなくなります。現に、理系の学生などで、才能・能力はあるのに、英語での発表や質疑に苦手意識があるばっかりに、その才能・能力が活かされていない若者が多数存在しています。
──国公立では、東大、京大などトップ校が導入していない。
鈴木氏:だから、最近は、東大を蹴って、海外大学にいく優秀な高校生が増えています。95%以上が一般入試を経ている東大生の英語4技能の力は、一般入試入学が半分の慶應SFCの学生に比べて、遥かに劣っています。東大も、民間試験を使うのがいやならば、京都工芸繊維大のように独自で4技能試験を実施すべきです。東大も矛盾していて、東大のHPには、アドミッション・ポリシー(大学の入学者受け入れ方針)のなかで「英語4技能を身につけるべき、しかし、スピーキングの試験は技術的な課題があって実施していない」と書いてある。今の教授陣のマンパワーでスピーキングの試験を独自に実施するのが大変なのはわかりますが、技術的な課題があってできないのなら、民間試験を吟味して選んで使えばいいのです。現に、東大の大学院入試や東大の学部でも留学生や帰国生の入試には民間試験を利用しています。おかしな話です。
千葉大学などは、民間試験をしっかり利用し始めました。強豪校がひしめく関東で競争にさらされていて、生き残るために必死で考えて、英語4技能を極めて重視した改革を行っているのです。東大との差異をどう出していくかを考えて改革をしている。金沢大も京大とどうすれば差異を出せるか考えている。東大や京大のやっていないことをやろうという姿勢は評価すべきです。千葉大や金沢大はもともと優秀な大学ですけれど、実業界は、各大学の中味をよくみて、これらの大学の人材をもっと注目すべきだと思います。
◆私立大の多くが記述式を実施せず
──記述式問題の導入状況はどうか。
鈴木氏:共通テストへの記述式導入は、当初は80文字書かせる設問を導入し、いずれ100文字、120文字へと増やしていく計画でしたが、先送りされ、導入は未定になりました。それで、各大学が個別にやるということになったわけですが、結局、今年の入試を見る限り、ほとんど変わっていません。