新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため間隔を空けてマスク姿で新茶摘み(時事通信フォト)
約10年前、原田さんは地元の農協や斡旋団体に勧められて「技能実習生」の受け入れを決めた。農業は若者に魅力がないらしく、実の子でさえ農業を継ぎたくないと出て行った。地元に残るのは高齢者ばかりで、とても労働力にはなり得ない。安い労働力である「技能実習生」が派遣されてくることは「渡りに船」だと思ったという。しかし……。
「やっぱり、貧しい国から豊かな国にやってきた単純労働者、という風にしか思えませんでした、申し訳ないけど。朝から深夜まで働いてもらうだけで、じゃあ本当に特別な“技能”を習得できていたのかって。今は、彼らの国も発展して物価も上がり、実習生なんてやってられないという若者も増えました。そこで今回のコロナでしょう? 人が足りないから移民を受け入れよう、という議論もありますけど、こういう問題が起きた時、どうするのか。人が足りないという職場、現場は結局選り好みされて“人気がない”ってだけで、働く人はいるんですよ、実際には。安易に外ばかりに頼ってはいけないんです。銀行や農協に言われて色んなことをやってきたけど、なんか気付いちゃったって感じだよね。金儲けというより、農業やってるわけだから」(原田さん)
実際に原田さんの元で働く群馬県内のリゾートホテル従業員・吉川健太郎さん(仮名・40代)も次のように述べる。
「本当なら超がつく繁忙期のはずでしたが、営業縮小で給料の出ない“休み”を強制させられました。ホテルにも繁忙期、閑散期があり、被りさえしなければ、閑散期はこうやって農業を手伝う、というのも良い気がします。人口も減っているし、この先仕事だって減ってくるかもしれない。その時は、人が必要とされている場所に行って掛け持ちで働けばいい。ホテルマンなので、国際化やインバウンドは大歓迎でしたが、コロナで考え方や生き方を改めて考えています」(吉川さん)
「持続可能な社会」の形成などと言われてきた昨今だが、安価な労働力を外から導入し、それでなんとか回していく、というのははたして本当に持続的なのか?より安価な労働力を求めて、さらに貧しい国へと触手を拡げざるを得なくなることも、歪ながらも資本主義が説く「あるべき姿」だろうが、あくなき利益追及の先には必ず終わりがあるし、コロナウイルスのようなパニックが起きれば、全てが一気に瓦解する。必要なことを自分たちの力で可能な限り行うという、まさに無理のない「持続可能な生き方」を選択する人々が「コロナ後の世界」の主役になってくるのかもしれない。