牛痘を用いた天然痘の予防接種に殺到する人々を描いたイギリス人画家の風刺画(写真/AFLO)

牛痘を用いた天然痘の予防接種に殺到する人々を描いたイギリスの画家による風刺画(画像/AFLO)

「狩猟生活をしていた時代は移動が多く、糞尿の処理など衛生面での問題が少なかった。さらに集団ごとの人数も少なく、仮に感染症が起きてもすぐに終息した。

 ところが農耕を営むようになると、集団の規模が大きくなり、定住するようになります。すると、処理が不充分な糞尿から、寄生虫や細菌による感染症が発生し、集団内でうつし合う形になる。見方を変えれば、感染症が流行するということは、増加した人口を維持できるほどの文明が成立した証拠でもあるのです」

◆集団として免疫を持つことは別の感染症の防波堤になり得る

 パンデミックが永久に続くことはない。一方で、感染症を根絶することは不可能に近い。これまでに、人類が「完全勝利」したといえる感染症は天然痘しかなく、そのほかの感染症はいまも、世界のどこかに感染者がいる。

 だが、たとえ根絶はしなくとも、「集団免疫」を身につけることで事態は穏やかな終息を迎える。山本さんが解説する。

「新型コロナはすでに世界中に広がっており、もはや根絶することは難しい。治療薬やワクチンの登場時期にもよりますが、個人的には、このままいけば全人口の7割が免疫を獲得するまでに1~2年くらいかかると考えています。それ以降は、風邪程度の症状に落ち着いていくのではないかと思います」

 身につけた新型コロナの免疫力は、数十年、あるいは数百年単位で見ると人類にとってメリットになり得るという。山本さんが続ける。

「木々がうっそうと生い茂る密林には、新しい植物が進出しにくいものです。これとよく似ていて、新型コロナの免疫獲得は、別の感染症の防波堤になってくれる可能性があるのです」

 免疫を得る手段は、ワクチン接種によって人工的に得る方法が一般的だが、生活の中で自然にウイルスに感染する「自然感染」という方法もある。

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