ゴールデンウイークを終えてから、新型コロナウイルスの新規感染者数は徐々に落ち着きを見せている。しかし、この感染症のやっかいな点は、感染しても極端に症状が軽い人や、無症状の人が少なくないことだ。
さらに日本では、医療崩壊を防ぐためなどの理由でPCR検査の件数が絞られた経緯がある。そのため、発熱などの症状が出ていてもPCR検査を受けられなかった人が大勢おり、もしかしたらコロナだったかもしれないという曖昧な状態の人が相当数、放置されているのだ。
そんな折、厚生労働省は、6月から東京都、大阪府、宮城県で計1万人程度を対象とした大規模な「抗体検査」を実施すると表明した。沖縄県でも、県が独自に6000人を対象に抗体検査を行うことが決まっており、すでに対象者の割り振りが始まっている。
抗体検査によって、私たちの暮らしはどう変わるのだろうか。わだ内科クリニック院長の和田眞紀夫さんが「抗体」の特性を解説する。
「人間の体は、ウイルスなどの病原体が体内に侵入すると、異物に対抗するために体内で『免疫反応』を起こし、『抗体』を作ります。抗体とは、免疫反応の際に作り出されるタンパク質のことです。検査をして、血液中に抗体が見つかれば、その人は過去にウイルス感染していたことがわかるのです。一般論として、抗体がある人は同じ病気に再感染しない、しても重症化しづらいといわれています」
つまり、「抗体」とは病原体が体内に侵入した際に残した“足跡”のことであり、「抗体検査」は足跡を捜索するための検査といえる。大規模な抗体検査を行えば、「コロナだったかもしれない」人たちが感染していたのかシロクロはっきりするということだ。
この「抗体検査」という言葉は、新型コロナ関連の報道で耳にする機会が増えたが、以前からさまざまな病原体で検査は行われてきた。太融寺町谷口クリニック院長の谷口恭さんが話す。
「抗体には“役に立つ抗体”と“役に立たない抗体”があります。役に立つ抗体は『中和抗体』といい、治癒後に再び病原体が体内に侵入したら、それをやっつけてくれる。麻疹(はしか)やおたふく風邪、水ぼうそうなどの抗体が『中和抗体』で、一度かかると二度とかかりません。一方、HIVやC型肝炎のウイルスに感染したときにできるのは“役に立たない抗体”です。感染してできた抗体が新たな感染を防いでくれるわけではありません。
新型コロナウイルスの抗体がいずれの抗体なのかは、まだ不明です。それに、すでにウイルスの変異も生じており、仮に中和抗体ができたとしても、変異後の新型コロナには効かない恐れもあります」