AI導入が果たす役割・機能についてまとめた総務省の調査研究(平成28年)によると、回答がもっとも多かったのは「既存の労働力を省力化する」の41%だった。「10~20年後に日本の労働人口の49%がAIやロボットなどによって代替可能になる」という野村総合研究所とオックスフォード大によるショッキングな共同研究の報告もある(2015年)。生産年齢人口が減り続ける中、AIやロボットは、労働を補完するだけでなく、労働者の仕事を奪っていく。そんな時代になっていく可能性が高い。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で解雇・雇い止めが加速し、5月21日時点で1万835人に達した(厚労省公表)。非正規社員がどんどん切られているのが実態だが、コロナ禍による景気後退が長期化していけば、効率性を追求する企業のリストラが横行するのは目に見えている。そこにAI導入で全国的な規模で人員削減が進む恐れさえある。「大失業時代の到来」も覚悟したほうがいいかもしれない。
では、世界における日本の立場はどうなるのだろうか。内閣府の経済財政諮問会議の 「2030年展望と改革 タスクフォース報告書」(2017年)によると、世界経済(全体で57.7兆ドル)における各国シェアは、2010年はアメリカが23.6%でトップ、ユーロ圏が17.1%、中国が15.8%で 日本はわずか6.9%だった。
2030年(世界全体で111.1兆ドル)になるとトップは中国に変わり、そのシェアは23.7%。アメリカは20.2%に落ち込み、日本は4.4%に低下してインド(10.0%)に逆転される。1970年代末期から1980年代にかけて 「ジャパン・アズ・ナンバー1」なんてもてはやされていたのが嘘のような凋落ぶりだ。もはやアジアの中でも中国やインドに大きく水を開けられ、成長著しいインドネシアにも逆転されているかもしれない。アジアでも中位グループとなってしまうということだ。
深刻なのは食糧事情だ。世界人口は2011年の70億人から2030年には96億人へと膨れ上がる。2030年の世界の食糧需要33億トンに対し、食糧供給は29億トンにとどまり、ひっ迫傾向が強まると指摘している。食糧輸入大国・日本にとってこれは危機的状況になる。4割を切っている食料自給率を上げていくためのドラスチックな政策が急務だ。