取材中「人との交流ができないいま、高齢の親が心配で」と話すと、突然、小池さんが筆を取りサラサラッと書いてくれた一枚

◆絵ははみ出すほどに大きく描くのがいい

 デジタル通信が多いいま、手書きの手紙はやはりハードルが高い。でも絵手紙なら「ヘタでいい、ヘタがいい」のだ。お手本なしのぶっつけ本番。思い切るだけでいい。

「絵手紙で大切なのは、正直な気持ちを伝えることです。テクニックの1つとして、日本絵手紙協会の講座では筆のてっぺんを持って縦横の直線と曲線の練習をします。筆先が不安定なので書きにくいし疲れるけれど、座禅のように集中する。ゆっくり筆を動かすので初心者はブルブル震えた線になる。この震えも気持ちの表れなのです。慣れてくれば味わいのある自分らしい文字が書けるようになり、どんどん書きたくなる。もちろん好きな筆記具でもよいのですが、一度は筆のよさを試してみてください」

 絵の題材は自分の身近にあるもの。心惹かれた野の花やおいしそうな夏野菜、最近では苦心して手作りしたマスクも気持ちを注ぎやすそうだ。気をつけて見ると生活のあちこちに気持ちを反映できる題材があるものだ。

「絵ははみ出すほどに大きく描くのがいい。すると長い文章はいらないでしょ(笑い)。文章が苦手という人は、書き出しを“斉藤さん”や“直子ちゃん”にするといい。手紙は心の叫びだから、叫ぶように始めると改まった心がほどけて言葉が出てくる。僕はうんと親しい人に“おーい”なんて書いたりします」

 小池さんのもとに全国から毎日届くたくさんの絵手紙を拝見すると、インパクトのある絵や言葉から、思わず送り主を想像したくなる。親しい送り主ならなおのこと、気持ちを感じてうれしいだろう。

「もう1つ、手紙の魅力は配達されること。自分のために心をこめて書かれた手紙を、別の人が届けてくれるという仕掛けもときめくでしょ。僕は“配達文学”と呼びたい」

 電話やメールでスピーディーに連絡が取れるいまだからこそ、丁寧な手書きの手紙を会えない老親に送ってみてはいかがだろう。絵手紙ならほかにない“ときめき”を届けられそうだ。

※女性セブン2020年6月11日号

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