「酸いも甘いも一緒に経験し、自分の考え方や習性もわかっているマネージャーだから、タレントは一緒に独立しようと考える。その人が何年もずっと付いていければ、問題は少ないでしょう。しかし、時間が経つと、大手時代からのマネージャーが離れることも珍しくない。個人事務所になれば、経営面も考えていかなければいけない。大手の頃は事務所に任せっきりだったお金の話もしないといけない。今まで以上に一緒にいる時間が長くなり、密になることで、以心伝心と思っていた相手と意見が合わなくなるケースもある。大手時代と同じような関係性を築くのが難しくなるんです」

 タレントを知り尽くしたマネージャーが離れてしまうと、新たなスタッフと1から関係を築かなければならなくなる。

「個人事務所を立ち上げられる人は、たいていそれなりのキャリアもある大物です。普通に考えればわかるように、いきなり付いたマネージャーが大物に意見は言いづらいものです。すると、自然と周りはイエスマンばかりになり、タレント本人も自分の望む仕事しかしなくなる。

 一見、理想的かもしれませんが、新たな魅力が創出されなくなり、同じような仕事を繰り返すばかりで、タレント活動が停滞していきます。スタッフは常にタレントの顔色ばかりを窺いながら仕事をする。オファーをしても、マネージャーが忖度して、タレントの耳まで届かずに断られるケースもよくあります。依頼を受諾しても、タレントに対して意見できないので、メディア側の人間に『あれはダメ、これもダメ』と過度なNGの要求が多くなる。すると、自然とテレビなどで見かけなくなったり、活動自体が停滞したりする」

 芸能界では、今後もタレントの独立、そして個人事務所の設立という流れが増えることが予想される。タレント本人が自分の置かれた状況を冷静に把握しながら、スタッフがイエスマンばかりにならない環境を作れるかも、独立後の成功へのキーポイントになりそうだ。

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