また、この国民データベースは、「国」と「個人」を電子的に双方向でつなげる必要がある。双方向にすることは、とくに税務や給付金などのお金の流れと行政の許認可手続きにおいて不可欠だからだ。その手段は基本的にスマホにする。スマホは個人のコミュニケーションツールとして最適であり、世界のデジタル先進国は、みなそうしている。
数兆円の無駄を繰り返すな
では、この国民データベースで何をするのか? 最もわかりやすい例は「医療」だろう。
本来、診断結果やカルテは患者自身のものなのに、実際はほとんどそうなっていない。このため、患者は診察の間隔が空いたり、新たな病院に行ったりすると、そのたびに診察申込書や問診票を書かなくてはならず、薬局でも同じ内容を書かされる。だが、すでに多くの医師はカルテをパソコンで入力しているのだから、それを患者のスマホに転送すれば済む話である。
患者の検査結果や診断結果、病歴、アレルギーなどの情報がデータベース化され、クラウドコンピューティングで一括管理されていれば、医師は診察の際にそれを患者の了承を得て確認すればよいので、無駄な検査や投薬がなくなる。他の病院でセカンドオピニオンを聞くのも容易になるし、将来的にはAI(人工知能)による診断も受けられるようになるだろう。
さらに、リレーショナルデータベースなら親族の病歴などもわかるから、遺伝子検査によって将来発症するかもしれない遺伝性の病気の予防にも生かせる。要は、医療を「提供者(病院や医師)の論理」から「生活者(患者)の論理」に転換できるわけだ。また、医療の手間と医療費が大幅に削減できるので、個人にとっても病院や医療従事者にとっても行政にとってもメリットは極めて大きい。いわば「三方よし」である。
そうしたメリットは医療以外の分野でも同様だ。